キッティングの負担がおおきく、効率化に悩んでいませんか。新拠点の設立や従業員の増加に伴い大量のキッティングが発生すると、社内のリソースが圧迫されて本来の業務に支障をきたすこともあります。 

本記事ではキッティング作業を工程ごとに分解し、各工程で適した職種を解説します。効率的な体制構築と業務負荷の軽減を実現できるだけでなく、外注と内製化の判断にも役立つので、参考にしてみてください。

キッティングとは｜業務端末を利用できる状態にする作業

キッティングとは、PCやタブレットなどの端末を、従業員がすぐに業務で使用できる状態に設定する作業のことです。

新入社員の入社時や部署異動、機器のリプレースなど、企業では定期的にキッティング作業が発生しています。近年はDX推進やリモートワークの普及に伴い、端末の配備や設定業務の重要性が高まっています。その結果、企業ではキッティングを効率的に行う体制整備が求められているでしょう。

キッティングの作業内容

キッティングの作業内容を以下の表にまとめました。

キッティングの作業内容

キッティングは、端末の開梱から業務で使用できる状態にするまでの一連の設定作業を指します。

OSの初期設定からアプリケーションのインストール、セキュリティ対策、ネットワーク設定まで幅広い工程を経由するのが特徴です。最終的には資産管理システムへの登録と納品書類の準備を行い、ユーザーがすぐに業務で使用できる状態に整えます。

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キッティングとセットアップとの違い

キッティングとセットアップは似た言葉ですが、厳密には作業の範囲と目的が異なります。

セットアップは、個々の機器やソフトウェアを使用できる状態にすることです。一方キッティングは、企業や組織において端末を設定し、業務で利用できる状態にする一連の作業を指します。

キッティングでは、セキュリティポリシーや業務要件に基づいた標準設定の適用に加え、資産管理システムへの登録や管理タグの貼付なども行います。

また、実務では同一仕様の端末を複数台まとめて設定するケースが多く、効率化の観点から一括で実施されることも少なくありません。

つまり、セットアップは単体の機器を使用できる状態にする作業、キッティングは企業が定めた標準や運用ルールに沿って、端末を業務で利用できる状態に整えるプロセスと言えます。

関連記事：キッティングとセットアップの違いは？おすすめの外注先も紹介

キッティングにおける工程別の職種分類

キッティング業務を効率化するには、下表のように作業を工程ごとに分解し、それぞれに適した職種を割り当てることが効果的です。

キッティングにおける工程別の職種分類

各工程で求められるスキルレベルはおおきく異なるため、作業内容に応じた人材配置がキッティングの質とスピードを左右します。

計画・設計段階

計画・設計段階では、キッティング全体の方向性を決めます。

導入する端末の機種やスペック、OSのバージョンなど、ハードウェア・ソフトウェアの仕様を決定し、業務要件に基づいてアプリケーションの選定やセキュリティ設定の方針を明確化します。

マスターイメージ（※）の設計では、標準的な設定内容や展開手順を定義することも重要です。さらに、必要な端末の台数や工程の計画、必要なソフトウェアライセンスの数量確認や調達も欠かせません。

計画・設計段階は社内SEとインフラエンジニアが主導するのが一般的です。

（※）マスターイメージ：複数の端末に同じ設定を一括で適用するためのひな型

機器準備・初期設定

機器準備・初期設定では、端末の物理的なセットアップと基本設定を行います。

届いた端末を開梱後、本体や付属品に破損がないか確認してモニター、キーボード、マウスなどの周辺機器も接続します。

BIOSやUEFI（※）など、OSが起動する前の基本的なハードウェア設定も欠かせません。ネットワークケーブルの接続やWi-Fi設定など、ネットワークへの接続作業も必要です。

資産管理タグを端末に貼付し、シリアル番号や管理番号を台帳に登録することで、企業資産としての管理状態を整えます。

機器準備・初期設定では、ITサポートやPCサポートといった職種が担当するのが一般的です。高度な技術知識は不要ですが、正確性と丁寧な作業が求められます。

※UEFI：PCのハードウェアとOSをつなぐための基本的なインターフェース仕様

ソフトウェアのインストール・展開

ソフトウェアのインストール・展開では、OSや業務アプリケーションを端末に導入して使用できる状態に設定します。具体的な作業内容は以下のとおりです。

• OSのインストールまたはマスターイメージの展開
• Officeソフトや業務アプリケーションの一括インストール
• ウイルス対策ソフトの導入およびセキュリティポリシーに基づく設定
• Windows Updateなど各種アップデート適用
• ディレクトリサービスへの参加
• ユーザーアカウントの作成と権限付与

ソフトウェアのインストール・展開は、ITサポート、テクニカルサポート、ヘルプデスク、インフラエンジニアといった職種が担当します。基本的な作業はマニュアルに従って進められますが、トラブル対応には技術的な知識が必要です。

検証・納品

検証・納品では、すべての設定が正しく完了しているか確認し、ユーザーに端末を引き渡します。

まず、インストールした各種ソフトウェアが正常に起動・動作するかを検証します。セキュリティ設定の検証では、ウイルス対策ソフトやファイアウォール設定の妥当性をチェックリストに沿って確認していくことで設定漏れを防げます。

すべての確認が完了したら、ユーザーに端末を引き渡す準備を整え、基本的な使用方法や注意事項を説明します。

検証・納品段階は、品質管理担当者やフィールドサポートといった職種が担当するのが一般的。品質管理の観点から、第三者がチェックすることで作業担当者のミスを防止できます。

保守・サポート

保守・サポートでは、納品後に発生するトラブル対応や、継続的なメンテナンス業務を担当します。

ユーザーから「メールが送信できない」「特定のソフトが起動しない」といった問い合わせを受け、原因を特定して解決します。「追加のアプリケーションをインストールしてほしい」といった要望や、細かい設定変更のリクエストに対応することも多いです。

定期的なソフトウェアのアップデートも重要な業務で、セキュリティパッチの適用やOSの更新などを計画的に実施します。

保守・サポート段階は、ヘルプデスク、ITサポート、システム運用担当といった職種が一般的です。技術的な知識に加えて、ユーザーの困りごとを丁寧に聞き取り、説明するコミュニケーション能力が求められます。

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キッティングにおける社内人材と外注の使い分け基準

キッティングを効率的に進めるには、どの工程を社内で対応すべきか、もしくは外注すべきかを適切に判断することが重要です。

コスト・品質・セキュリティの3つの観点から総合的に評価し、企業規模や業務量に応じて柔軟に使い分けることで、最適な体制を構築できます。ここでは工程ごとの判断基準と、社内対応・外注それぞれのメリットを解説します。

計画段階は社内対応が有効

計画・設計段階は社内の人材が主導するのが有効です。

計画段階では、自社の業務要件や既存インフラとの整合性を深く理解していなければいけません。たとえば、営業部が使用する業務システムとの連携や経理部で必要な会計ソフトの設定など、部門ごとの要件を把握しているのは社内担当者です。

セキュリティポリシーや社内ルールの策定においても、内部情報の理解が不可欠です。どのレベルの従業員にどこまでのアクセス権限を与えるかといった判断は、社内人材でなければ適切に行えません。

長期的な視点でのシステム設計や標準化には、継続的な関与が求められます。今後の事業拡大や組織変更を見据えたキッティングを行うには、自社のビジョンを理解している人材が適任です。

大量・定型作業は外注化で効率化を図る

大量に発生する定型作業は、外部委託によって大幅なコスト削減と効率化を実現できます。

マニュアル化された作業であれば、専門業者のノウハウを活用することで、短時間かつ低コストで行うことが可能です。具体的には、機器の開梱、初期設定、ソフトウェアの一括インストール、動作確認テストといった作業が外注に適しています。

繁忙期や大量導入時には、社内リソースのみでは対応できないかもしれません。外部の派遣スタッフやキッティング代行業者を活用すれば、一時的に増員して短期間で大量のキッティングを完了できます。

非定型・機密性の高い作業は社内で対応

非定型的な作業や機密性の高い情報を扱う作業は、社内の人材が適任です。

カスタマイズが必要な設定や特殊な要件がある場合、外部の作業者では対応しきれないケースがあります。たとえば、特定の部署で使用するシステムや独自のアプリケーション設定などは、業務知識が必要です。

機密データや重要システムへのアクセス権設定については、外部委託することで情報漏洩のリスクが高まります。経営層や特定部署向けの端末など、高度なセキュリティ要件がある場合は、信頼できる社内人材が担当するのが安全です。

また、トラブル発生時の迅速な対応や柔軟な変更対応においても、社内人材が有効です。予期せぬ問題が発生したときに、すぐに関係部署と連携して解決を図れるでしょう。

キッティングを外注するときの主な選択肢

上述のように、大量のキッティングや定型作業では外注が効果的です。外注先にはさまざまな形態があり、主に以下の5つの選択肢があります。

• キッティング代行
• PCレンタル・リース会社
• SES
• 派遣
• フリーランス

それぞれの委託先には特徴があり、業務の規模や内容、予算に応じて最適な選択肢は異なります。

キッティング代行

キッティング代行は、端末の開梱や設定などを一括で請け負う専門業者です。マスターイメージの作成から展開、動作検証、納品までの全工程をワンストップで行います。

おおきなメリットは、専門性の高さと作業品質の安定性です。効率的な手順とトラブル対応のノウハウが豊富で、数百台規模の大量案件にも短期間で対応できます。社内リソースを圧迫せずに情報システム部門が本来業務に集中できることも利点です。

一方で、委託範囲が広くなるほどコストは上昇します。OSやアプリのインストール、セキュリティ設定、資産管理登録など複数の工程を含む場合は費用が増えるため、委託範囲を明確に定めることが重要です。

小規模案件では、費用対効果を考慮して一部工程のみ外注する選択も有効です。

関連記事：キッティング代行とは？メリットや活用が適しているケースなどを紹介

PCレンタル・リース会社

PCレンタル・リース会社は契約の一環としてキッティングが含まれている場合が多く、別途手配する手間がかかりません。導入から廃棄までのライフサイクル管理を一元化できるのが特徴です。

メリットは調達とキッティングを同時に依頼できることで、窓口が一つになり管理の労力を削減できる点です。また、月額料金で利用できるため、初期費用を抑えられるのも魅力です。

デメリットは、契約期間の制約があることです。リースの場合、通常2年以上の契約期間が設定されており、途中解約すると違約金が発生する可能性があります。また、月額のレンタル・リース料にキッティング費用が含まれるため、長期的に見ると総コストが高くなるケースもあります。

SES

SESとはシステムエンジニアリングサービスの略で、専門スキルをもつエンジニアが契約先の企業で業務を支援する契約形態です。主にシステム開発やインフラ構築、運用支援を目的としており、キッティングはこれらの業務に付随する作業として行われるケースが多いでしょう。

メリットは、システム導入やネットワーク構築など、キッティングを含む幅広いIT業務を一括して支援できる点です。既存システムとの連携やセキュリティ要件に関わる設定など、一定の技術判断を伴う作業でも柔軟に対応できます。

一方で、キッティング単体の依頼には不向きです。SESはエンジニアを一定期間常駐させる契約形態であり、短期・定型の作業を請け負うサービスではありません。

また、プロジェクト内容やスキル要件にもよりますが、月額45万円〜85万円程度の費用がかかるため、小規模な案件では費用対効果が見合わない可能性があります。

関連記事：インフラエンジニアのSES採用とは？フリーランスとの比較も解説

派遣

派遣は、人材派遣会社を通じてキッティング作業者を自社に受け入れる形態です。技術派遣やITサポート職の派遣として契約し、必要な期間に人員を確保できます。

メリットは自社に指揮命令権があるため、作業の進め方や優先順位について詳細に指示できる点です。ほかの業務も並行して依頼できるため、キッティング以外の作業も任せられるでしょう。

デメリットは、教育・指導の手間が増える可能性があることです。自社で作業内容を指示する必要があるため、手順や体制が整っていない場合は負担が増えます。派遣スタッフのスキルが十分でない場合は、さらに教育コストがかかるでしょう。

関連記事：インフラエンジニアを派遣会社で採用するメリット｜他の契約との違いも解説

フリーランス

フリーランスは、特定の企業に所属せず、個人で案件を受注する人材のことです。

大規模なマスターイメージ作成やクラウド環境でのキッティング自動化など、特定領域に強みのある人材が多いのが特徴です。複数企業のプロジェクト経験から効率的な手順にも精通しています。

メリットは、契約の柔軟性が高いことです。必要な期間だけ依頼できるため、最小限のコストで必要なリソースを確保できます。単発の依頼から継続的な契約まで対応でき、報酬も作業量や難易度に応じて設定可能です。

たとえば、急な拠点開設や機器のリプレースなどの予期せぬキッティング需要に対しても、迅速に対応できます。

小規模案件やスポット対応、特定のスキルが必要な案件、予算の制約が厳しい案件などに適しています。

関連記事：インフラエンジニアへの外注とは？業務委託のメリットとおすすめのエージェントも紹介

キッティングをフリーランスに依頼するならクロスネットワークにご相談を

本記事では、キッティングの各工程における職種の分類と、社内対応と外注の切り分け基準について解説しました。工程によって作業内容や求められるスキルが異なるため、適切な人材配置が効率化の鍵となります。

定型作業は高度なスキルを必要としない一方で、工数が膨大になることがあります。社内リソースが不足する場合は外部委託も検討しましょう。

大量案件や繁忙期の対応には、キッティング代行や派遣などの活用が効果的です。一方、小規模案件で特定のスキルが必要な場合や、契約・報酬の柔軟性、スピードを重視するならフリーランスの活用が有効です。

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