複数台のサーバー導入で「効率的にできないだろうか?」「手順や設定を間違えないだろうか?」と不安を抱えていませんか?
サーバーキッティングは、OSをインストールするだけの単純作業ではありません。サーバーの安定性や運用負荷を左右する重要な工程です。
そこで本記事では、サーバーキッティングの作業内容や注意したいポイントなどをわかりやすく解説します。さらに、外部委託のメリットや業者選びのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
サーバーキッティングとは
サーバーキッティングとは、サーバーを業務で利用できる状態にするための一連の作業です。システムの安定稼働や運用・管理の効率化を実現するための土台作りのような目的があります。
キッティング作業には、以下のように2種類の観点があります。
- 出荷前キッティング(工場・倉庫で実施)
 - オンサイトキッティング(サーバーを設置する現地で実施)
 
今回の記事では、とくに担当者が直接かかわる機会の多い「オンサイトキッティング」に焦点を当てて解説していきます。
出荷前キッティング(工場・倉庫で実施)
出荷前キッティングは、サーバーを納品先に配送する前に行う初期設定や動作確認などの作業です。主に製造工場や倉庫で実施されています。
出荷前キッティングのメイン作業は、以下のようにハードウェアレベルの汎用的な設定です。
- サーバーの電源が問題なく入るか
 - メモリやストレージなどが正しく認識されているか
 - OSのインストールや標準的な設定が完了しているか
 
出荷前キッティングの主な目的は、納品先でスムーズにサーバーを稼働できる状態に整えることです。サーバーの製造元や販売代理店が担当するケースも多いため、情シス担当者やインフラエンジニアが直接関与する機会はそれほどありません。
オンサイトキッティング(サーバーを設置する現地で実施)
オンサイトキッティングは、サーバーが企業内のサーバールームやデータセンターへ納品後に行われる設定作業です。情報システム部門やインフラエンジニアの担当範囲として、主体的に対応するケースがあります。
汎用的な設定作業がメインの出荷前キッティングに対し、オンサイトキッティングでは実際の利用環境にあわせた以下のような設定が求められます。
- ネットワーク・セキュリティの設定
 - 業務で利用するミドルウェアの導入
 - 本番稼働に向けたインフラ環境の構築
 
サーバーを安全かつ安定的に利用できる状態に仕上げるため、現地のインフラ環境に最適化する目的があります。
セットアップや構築との違い
| キッティング | 
  | 
| セットアップ | 
  | 
| 構築 | 
  | 
サーバーに関連する作業として、「セットアップ」や「構築」という言葉が使われます。上表のようにそれぞれの言葉の意味合いが異なるため、キッティングとの使い分けが必要です。
キッティングとセットアップは、どちらもサーバーを「使用できる状態」にする作業を指します。ただし、セットアップは、主にOSのインストールやシステム設定などの「初期設定」を目的とする業務です。
また、サーバー構築は自社業務やサービスの拡大・効率化を目的とし、インフラ構築の「サーバー部分の対応」として用いられています。業務で使用するサーバーを用意する観点はキッティングも同様ですが、構築のほうがより明確な目的に沿って設計・構成する意味合いが強い業務です。
サーバーキッティングの主な作業内容
ここからは、サーバーキッティングの主な作業内容を以下の3つに分けて解説します。
- ハードウェアの設置・動作確認
 - ソフトウェアのインストール・動作確認
 - 各種ドキュメントの作成・管理
 
ハードウェアの設置・動作確認
サーバーキッティングは、ハードウェアの設置と動作確認からスタートします。主に以下のような対応の流れが基本です。
- サーバー機器の開梱・ラッキング
 - HDD・CPU・メモリなどの構成確認
(出荷前キッティングが仕様通りに行われているか) - 電源・ネットワークケーブルの配線
 - ハードウェア周りの動作確認
(初期不良や設定・配線のミスがないか) 
納品されたサーバーを開梱したら、一般的にはサーバーラックに設置します。サーバー筐体は重量があり、精密機器でもあるため、複数人で慎重にラッキング作業を進めるのが安全です。
ラッキングが完了したら、出荷前キッティングが仕様書通りに行われているかどうかを確認します。そして、電源やLANケーブルなどを配線し、ハードウェアの初期不良や設定・配線のミスがなければ対応完了です。
ソフトウェアのインストール・動作確認
ハードウェアの対応が完了したら、ソフトウェアのインストールと動作確認に移ります。主な流れは以下のとおりです。
- サーバーOSが正常に起動するかどうかを確認する
 - ネットワーク・セキュリティの設定を確認する
(出荷前キッティングが仕様通りに行われているか) - 業務に必要なソフトウェアやアプリケーションをインストールする
(出荷前キッティングに含まれない個別対応) - サーバーが正常稼働するかどうかを確認する
 
サーバーOSが正常に起動したら、以下の観点でネットワーク・セキュリティの設定を確認します。
- 社内環境にあわせてIPアドレスが設定されているか
 - ファイアウォールが設定されているか
 - プリインストールされた不要機能が削除されているか
 
| 【元インフラエンジニアのひと言】  あらかじめインストールされている機能のうち「業務で使わないもの」は削除しておくのが理想的です。サーバーの脆弱性につながるリスクもあるため、セキュリティ対策としても欠かせません。 個人的な経験としては、プリインストールされたセキュリティソフトが残っていたことで、本来使用したい対策ソフトの機能と干渉してしまうケースもありました。  | 
各種設定の確認が完了したら、以下の観点でサーバーの正常稼働をチェックしましょう。
- インストールしたソフトウェアが正常に起動するか
 - 各デバイス間でネットワークが正しく疎通しているか(ping)
 - 設定したパラメータにミスや漏れがないか
 
各種ドキュメントの作成・管理
ハードウェアとソフトウェアの動作確認が完了したら、サーバーキッティングの最終段階として以下のドキュメントを作成します。出荷前キッティングに対応が含まれる場合は、ドキュメントの内容をチェックしましょう。
- 作業手順書
 - パラメーターシート
 - 資産・ライセンス管理台帳
 
各種ドキュメントを作成しておくことで、キッティングの担当者が変わったときの引き継ぎもスムーズに対応できます。また、サーバー障害の発生時には、原因を特定するための重要な手がかりとして有効です。
出荷前キッティングで作成された資料がある場合は、その内容と実際のサーバー設定に相違がないことをチェックします。サーバー本体を資産として識別するため、資産管理ラベルを貼り付ける作業も忘れずに実施しましょう。
サーバーキッティングに失敗しないためのポイント
キッティング作業の手戻りを防ぎ、サーバーの安定稼働を実現するためには、以下の観点が欠かせません。
- 設定の工夫でサーバー運用の負担を減らす
 - 構成の工夫でサーバー性能を最大限に引き出す
 - 物理サーバーと仮想サーバーの違いを理解する
 
細かな対応の漏れや認識不足によって、キッティング後の手間や負担を増やしてしまう可能性があるため注意しましょう。
設定の工夫でサーバー運用の負担を減らす
以下のようなサーバーキッティングの工夫は、運用開始後の負担軽減につながります。
- 各サーバーに一貫した命名規則を適用する
 - タイムスタンプがずれないように時刻同期設定を入れる
(ADサーバをNTPサーバとして設定するのが一般的) - 不要なサービス・ポートを無効化する
 
ホスト名やIPアドレスなどに命名規則を定めると、サーバーの役割や設置場所を名前から推測できます。また、システムログのタイムスタンプがずれると障害発生時の原因特定が難しくなるため、社内の基準サーバー(NTPサーバー)との時刻同期設定を入れておきましょう。
OSのインストールによって有効化されるサービスには、業務で利用しないものも少なくありません。利用しないサービスがサーバーのリソースを圧迫するだけでなく、セキュリティホールとなる可能性もあるため無効化または削除しておくと安心です。
複数のLANポートを搭載しているサーバーであれば、使用しないポートを設定で閉じておきましょう。配線ミスによるネットワーク障害や悪意ある接続による被害などを防ぐ効果が期待できます。
構成の工夫でサーバー性能を最大限に引き出す
サーバーの性能を最大限に引き出すためには、以下のようなハードウェア構成の工夫が求められます。
- 用途に応じてRAID構成を選択する
例1)書き込み速度と冗長性が求められるならRAID 10
例2)容量効率と冗長性のバランスを取りたいならRAID 5またはRAID 6 - 将来的な拡張性を考慮したスペック設計を行う
 
RAID構成作業は出荷前キッティング時に対応するため、発注時に考慮が必要です。オンサイトキッティングでは、発注時に指定した構成かどうかの確認と動作検証を実施します。
また、将来的な事業やサービスの拡大を想定し、サーバーのスペックに拡張の余地を残しておくのが一般的です。サーバーのスペックが不足すると、以下のような対応が必要になります。
- スケールアップ:CPUやメモリを増設してサーバー単体の性能を上げる
 - スケールアウト:サーバーの台数を増やして処理の負荷を分散する
 
いずれの方法も拡張数や設置スペースの限界があるため、構成検討の段階で利用するアプリや利用者の規模にあわせたハードウェアの選定が必要です。必要に応じて仮想化やクラウド化も検討しましょう。
サーバーの機種やスペックは発注時に指定するため、オンサイトキッティングでは仕様に沿っているかどうかを確認します。
物理サーバーと仮想サーバーの違いを理解する
| サーバーの種類 | 主な注意点 | 
|---|---|
| 物理サーバー | 
  | 
| 仮想サーバー | 
  | 
主なサーバーの種類は、上表のように2種類に分けられます。サーバーキッティングの基本的な流れは同じですが、細かな観点や注意点には違いがあるため事前に把握しておきましょう。
とくに近年主流の仮想サーバーでは、専用ツールをインストールしたりリソースを過不足なく割り当てたりする仮想化特有の作業が求められます。仮想化のノウハウに不安が残る場合は、専門知識をもつインフラエンジニアを活用するのも効果的です。
関連記事:キッティング作業で求められるエンジニアスキル|人材確保のコツも解説
複雑なサーバキッティングには外部委託がおすすめ
情シス担当者のリソースが限られている場合は、専門業者への外部委託を検討するのも効果的です。外部リソースを活用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 自社にないノウハウを導入できる
 - 複数のサーバーを短期間でキッティングできる
 - 注力したいコア業務にリソースを集中できる
 
自社にないノウハウを導入できる
サーバーキッティングを外部委託するメリットは、自社にない専門的なノウハウを取り入れられることです。導入実績が豊富な委託先であれば、自社に不足するノウハウを補うように質の高いサーバーキッティングを依頼できます。
また、仮想化やクラウド化への切り替えを検討している企業にも外部委託がおすすめは有効な選択肢です。ツールを用いた効率化や複雑な動作検証など、情シス担当者が学ぶには時間のかかる実践的な対応や判断を期待できます。
高度な作業を社内だけで対応するのは難しい場合もあるため、専門的なスキルをもつインフラエンジニアに支援を依頼することも検討してみましょう。
複数のサーバーを短期間でキッティングできる
数十台規模のサーバーを導入するような大規模なプロジェクトでは、体制の整った専門業者を活用するのが効果的です。自社の限られたリソースで多数のサーバーをキッティングすると、膨大な時間と労力がかかる可能性もあります。
とくにサーバーキッティングが標準化・効率化されている大手企業や専門業者に依頼すれば、自社のリソースでは実現できないような対応を期待できます。新サービスの立ち上げや事業拠点の拡大など、迅速な対応が求められる場面において委託先の人員体制は魅力的な強みです。
関連記事:キッティングサービスの大手企業5選|依頼先の選び方や注意点も解説
注力したいコア業務にリソースを集中できる
サーバーキッティングを外部委託することで、社内リソースを本来注力すべきコア業務に割り当てられます。一時的な作業に多くの時間を取られ、コア業務に着手する余裕がなくなってしまうのは情シス担当者のよくある悩みです。
外部リソースを活用することで、キッティングのための人員を新たに採用する必要はありません。必要なタイミングに必要な期間のみ外部リソースを活用できるため、コストを最小限に抑える効果も期待できます。
自社にあった外部委託先を選ぶポイント
外部委託はキッティングを効率化するだけでなく、社内リソースの最適化にも効果的です。しかし、委託先の選定を誤ると、想定通りの成果が得られないことも少なくありません。
そこで、以下の観点に沿って、自社にあった外部委託先を選ぶポイントを解説します。
- サーバキッティングの豊富な実績がある
 - セキュリティ対策に取り組んでいる
 - ツールを用いた効率化・自動化を提案できる
 - 柔軟な対応を依頼できる(フリーランスもおすすめ)
 
サーバキッティングの豊富な実績がある
まずは、以下の観点でサーバーキッティングの実績があるかどうかを確認しましょう。
- 自社が導入したいサーバーOSやメーカーの対応実績があるか
 - 類似環境(物理/仮想/クラウド)でのキッティング実績があるか
 
実績の有無は、公式サイトに掲載されている導入事例から把握できます。確認できる事例が少ない場合は、問い合わせ時に具体的な実績について質問しておくと安心です。
専門知識を要するキッティング環境の構築には、サーバーだけでなく、ネットワークやセキュリティ設定などの基礎知識をもつインフラエンジニアが対応するケースもあります。とくに、サーバーの仮想化やクラウド環境との連携を伴うキッティングでは、インフラエンジニアのスキルが業務効率化と安定稼働に大きく貢献するでしょう。
セキュリティ対策に取り組んでいる
キッティング作業では、企業の機密情報や個人情報を取り扱うケースもあります。業者のセキュリティ対策に対する取り組みとして、以下の観点をチェックしておくのも重要なポイントです。
- 第三者認証の取得状況(プライバシーマークやISMSなど)
 - 作業場所のセキュリティ管理体制(監視カメラ、入退室管理など)
 - NDA(秘密保持契約)締結の可否
 
上記に加えて、情報漏洩防止の運用ルールが整備されているかどうかも確認しておくと安心です。対策が徹底されている業者を選ぶことで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。
ツールを用いた効率化・自動化を提案できる
手作業のキッティングには、ツール(バッチやスクリプト)を用いた効率化・自動化の余地があります。設定の反映や動作確認など、定型的な作業をツールで効率化できれば作業負荷を軽減し、品質を安定させることが可能です。
ツールの作成や選定には専門的な知識が必要なため、問い合わせ時に自社の作業手順をもとに改善案を提案できるかどうかを相談してみましょう。また、プログラムコードや自動化スクリプトに精通するインフラエンジニアのスキルを活用するのも効果的です。
関連記事:キッティング作業で求められるエンジニアスキル|人材確保のコツも解説
柔軟な対応を依頼できる(フリーランスもおすすめ)
企業の状況によっては、パッケージ化されたサービスではなく、個別の要件に柔軟に対応してくれる委託先が適しているケースもあります。自社特有の要件や部分的な作業依頼にも対応してくれるかどうかを確認してみましょう。
たとえば、コストや柔軟性を重視する場合は、フリーランスのインフラエンジニアに依頼するのもおすすめです。フリーランスであれば、自社の要件や対応期間に応じて比較的リーズナブルな単価で依頼しやすい傾向にあります。
ただし、個人で活動しているフリーランスは、スキルや実績の見極めが難しい側面も。そこで、エージェントサービスを活用すれば、自社の要件にマッチする人材をスムーズに見つけられます。

サーバーキッティングに強い人材探しならクロスネットワークで!
サーバーキッティングは業務利用を目的とする対応であり、ハードウェアとソフトウェアを総合的に構築するスキルが求められます。単純にサーバーをセットアップするだけではなく、システムの安定稼働や将来の拡張性を考慮する知識が必要です。
だからこそ、無理に社内リソースで対応すると、本来であれば効率化につながるキッティングのメリットを失ってしまう可能性があります。そこで、社内リソースの負担を軽減するなら、企業の状況やリソースにあわせて「外部委託(フリーランス)」という選択肢を検討するのも効果的です。
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				元エンジニアのWebライター。自動車部品工場のインフラエンジニアとして、サーバー・ネットワークの企画設計から運用・保守まで経験。自分が構築したインフラで数千人規模の工場が稼働している達成感とプレッシャーは今でも忘れられない。
					