サービスの拡大に伴う運用負荷を改善するため、SREの導入を検討する企業も少なくありません。しかし、専門性が求められるSREエンジニアの採用は難しく、育成や文化の醸成には時間とコストがかかります。
SREのエンジニア派遣は、このような課題を解決する選択肢の一つです。専門スキルをもつ即戦力をチームに迎え入れることで、システムの安定化と運用の効率化に貢献できます。
そこで本記事では、SREの導入にエンジニア派遣を活用するメリット・デメリットを解説します。自社に適した外部委託の選択肢を判断するため、ぜひ参考にしてみてください。
SREの導入にエンジニア派遣を活用するメリット
システムの信頼性を高め、事業の成長を支えるSRE(Site Reliability Engineering)の導入を検討する企業が増えています。しかし、採用市場ではSREの専門知識をもつエンジニアが限られており、人材確保は容易ではありません。
そこで有効な選択肢が、エンジニア派遣の活用です。外部の専門人材をチームに加えることで、SREの導入体制をスムーズに構築できます。ここでは、SREの導入におけるエンジニア派遣の活用メリットを解説します。
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SRE経験者を迅速に確保できる
エンジニア派遣を活用するメリットは、SREの経験がある人材を迅速に確保できることです。SREの役割を担うには、以下のように多岐にわたる専門的な経験が求められます。
- システムの稼働状況を監視するモニタリング
- 問題の原因を深く探るための可観測性
- 障害発生時に冷静に対応するインシデント対応
正社員の採用では、募集から入社まで数か月単位の時間がかかるケースもあります。とくに新規事業の立ち上げやサービスの拡大といった局面では、システムの安定性をいち早く確保するためにも人材確保に長い時間をかけられません。
エンジニア派遣を活用すれば、プロジェクトの初期段階からSREの導入体制をスムーズに構築できます。ただし、スキルのミスマッチを防ぐため、要件の明確化や受け入れ態勢の準備などが欠かせません。
採用・教育のコストダウンを期待できる
正社員を採用する場合は、採用活動・入社後研修・オンボーディングといった対応に相応の時間と費用が必要です。エンジニア派遣を活用することで、採用〜契約までのプロセスの一部を簡略化できます。
また、SREの役割として「運用改善・自動化・信頼性設計」などを期待するなら、業務に参画するまでの教育期間(リードタイム)の考慮も必要です。経験豊富な派遣エンジニアを受け入れれば、長期的な研修や教育プログラムがなくても即戦力としてスムーズにプロジェクトへ参画できます。
外部の知識やノウハウを取り入れられる
自社にはない新しい視点や専門的なノウハウを取り入れられることも、派遣エンジニアを活用するメリットの一つです。さまざまな企業でSREとしての経験を積んできた派遣エンジニアには、他社での成功事例や失敗から得た実践的な知見を期待できます。
たとえば、システムの信頼性を測る指標の設定方法や障害発生時の効果的な運用方法など、社内に前例がない課題に対する具体的なアドバイスをもらえる可能性も少なくありません。自社にはない視点をもつ外部人材がチームに加わることで、社内の開発文化や運用プロセスを見直すよいきっかけが生まれます。
エンジニア派遣の活用前に知っておきたいデメリットと対策
SRE導入の成功には、人手を補うだけではなく、継続的に運用を改善する仕組みと文化の形成が欠かせません。エンジニア派遣は即戦力の確保に有効な手段ですが、長期的な視点で見ると注意すべき点もあります。
自社に適した人材を確保するためにも、エンジニア派遣のデメリットも事前に理解しておきましょう。ここからは、SRE導入でエンジニア派遣を活用するときに考慮しておきたいデメリットと対策を解説します。
業務ノウハウが属人化しやすい
エンジニア派遣の活用には、業務フローやノウハウが社内に蓄積されにくい側面もあります。特定業務を遂行するために参画する派遣エンジニアは、業務の属人化に陥りやすい傾向があるためです。また、派遣契約では契約期間や成果物・担当範囲の制約があるケースもあり、業務のナレッジ化や引き継ぎがスムーズに連携できない可能性も考えられます。
SREに求められる運用改善やDevOpsの推進は、長期的な視点で取り組むのが理想的です。しかし、派遣契約の期間には最長3年間の制限があるため、長期的な仕組みや文化の形成には適していない場合もあります。
そこで、SRE導入の計画段階から情報共有やドキュメント整備、自社メンバーへの引き継ぎなどを組み込んでおく対策が必要です。契約満了を見据えて、業務ノウハウが自然と社内に残るような計画を立てておきましょう。
柔軟な対応を依頼しづらい
派遣契約では、契約期間や責任範囲などを定めてから業務をスタートするのが一般的です。そのため、急な仕様変更や契約外の対応を依頼しにくい傾向があります。
障害発生時の対応や改善提案・モニタリングなど、 SREの導入・運用では想定外な対応や継続的な対応が発生するケースも少なくありません。状況に応じて臨機応変に対応できない契約内容では、自社のエンジニアが対応せざるを得ない状況に陥るケースも想定されます。
対策としては、契約の段階で仕様変更や緊急時に伴う対応範囲をあらかじめ検討しておくのが効果的です。必要に応じて、自社のメンバーも含めて誰が対応・引継ぎを行うのかを決めておきましょう。
コストが割高になる可能性もある
長期的な視点で考慮すると、エンジニア派遣の活用はコストが割高になる可能性もあります。派遣エンジニアに支払う料金には、本人の報酬だけでなく派遣会社への手数料(マージン)が含まれているからです。
また、SREのように高度な専門知識や経験が求められる職種では、エンジニアの単価そのものが高くなりやすい傾向にあります。SREの運用は継続的に取り組む必要があるため、長期間にわたる派遣契約の手数料が積み重なるケースも想定すべきです。
長期的な運用を前提とする場合は、社内メンバーへのノウハウ共有や引き継ぎも視野に入れた契約内容を考慮する必要があります。外部委託のコストを重視するならフリーランスの活用も効果的です。
エンジニア派遣で依頼できるSREの主な業務内容
専門知識のある派遣エンジニアを受け入れることで、自社だけでは難しい高度な取り組みをスムーズに進められる可能性があります。しかし、SREを導入するにあたって、任せる業務内容を具体的にイメージするのは難しいかもしれません。
なぜなら、SREの業務範囲はシステムの監視から運用プロセスの改善まで多岐にわたるからです。そこで、エンジニア派遣で依頼できるSREの主な業務内容を以下の側面から解説します。
- 監視体制の設計・構築(SLI/SLOの策定)
- 信頼性のある開発・運用体制の構築(DevOpsの推進)
- インフラ構成のコード化(IaCの導入)
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監視体制の設計・構築(SLI/SLOの策定)
SREの重要な役割として、サービスの信頼性を定量的に把握・改善するための指標設定があります。以下は代表的な指標です。
| 指標 | 概要 | 目的 |
|---|---|---|
| SLA (サービスレベル合意) | サービス提供者と利用者間で合意したサービスレベルに関する契約 | サービスの品質を保証し、利用者と提供者間の認識を一致させる |
| SLO (サービスレベル目標) | システムの信頼性や可用性に関する具体的な目標値 | システムの信頼性や可用性を定量的に管理し、改善目標を設定する |
| SLI (サービスレベル指標) | SLOの達成度を測るための具体的な指標 | SLOの達成状況を監視し、問題発生時には迅速に対応する |
| エラーバジェット | SLOで定めた目標値を達成できなかった場合に許容されるエラーの範囲 | 新機能リリースや実験などのリスクを管理し、システムの安定性と開発速度のバランスをとる |
| 平均復旧時間 (MTTR) | システム障害発生から復旧までの平均時間 | 障害発生時の対応速度を評価し、復旧プロセスの改善を図る |
| 平均障害間隔 (MTBF) | システム障害発生から次の障害発生までの平均時間 | システムの安定性を評価し、予防保全に役立てる |
| 稼働率 (Uptime) | システムが正常に稼働している時間の割合 | システムの可用性を示す基本的な指標 |
指標に基づく監視体制を設計・構築することで、システムの信頼性や可用性を客観的に評価・改善できます。また、社内に「どの指標を取るべきか」の知見がない場合は、外部人材を入れることで設計フェーズの牽引が可能です。
信頼性のある開発・運用体制の構築(DevOpsの推進)
SREには運用改善だけでなく、開発・運用チームと連携しながら安全かつ迅速にサービス投入できる体制構築も求められます。開発・運用チームの連携強化は「DevOps」の考え方に基づいており、SREを担うエンジニアの重要な役割です。
DevOpsを推進する役割として、SREエンジニアは以下のような対応で開発スピードと信頼性のバランスをとります。
- CI/CDパイプラインを構築してリリースの迅速化と正確性を高める
- 継続的なモニタリングとフィードバックでサービスを改善する
- 明確な指標(目標設定)をもとに納得できる状況判断を行う
SREエンジニアはシステムの状況を継続的に監視しながら、分析によって得られたデータから改善点を見つけ出します。また、以下のようにSREエンジニアの客観的な視点により、開発のスピード感と運用の安定性のバランスをとることが可能です。
- 指標を満たしている(安定している):機能の新規追加
- 目標値を満たしていない:システムの修正・改善
インフラ構成のコード化(IaCの導入)
インフラの構成をプログラムコードのように記述して管理する手法は、IaC(Infrastructure as Code)と呼ばれています。インフラ構成をコード化することで、構成管理や環境再構築の効率化が可能です。
SREエンジニアの業務では、IaCの導入が以下の目的で活用されています。
- 運用トイル(繰り返し作業)を減らす
- 構成変更時のリスクを減らす
- 運用作業を自動化する(手作業の削減)
IaCの実現には、AWS CloudFormationやTerraformといった専門的なツールが用いられます。SREとして派遣エンジニアを受け入れるときには、ツールの使用経験や知識レベルを事前に確認しておくのが効果的です。
SREに強いエンジニア派遣を選ぶ5つのポイント
システムの安定的な運用を担うSREは、開発プロセス全体を改善する中核的な役割も求められます。そのため、一般的なITエンジニアの派遣サービスが、必ずしもSREの専門的なニーズに対応しているとは限りません。
SRE導入の成否は、適切なスキルと経験をもつ人材の確保にかかっています。自社の課題解決に貢献できるパートナーを見つけるためにも、これから解説する5つの観点を参考にしてみてください。
- SRE領域での実績・導入事例が豊富か
- 技術的な課題への理解度があるか
- サポート体制・フォロー体制が整っているか
- 契約条件やコストの柔軟性があるか
- 主体的な改善提案が期待できるか
SRE領域での実績・導入事例が豊富か
エンジニア派遣会社を選ぶときには、まずはSRE領域における実績を確認しましょう。ITエンジニアを派遣しているかどうかではなく、以下の観点をチェックするのが効果的です。
- SREの導入経験・実績があるか
- SREに関連する業務経験があるか
(モニタリング・インシデント対応・改善提案など)
ITエンジニア派遣を提供しているすべての企業がSREに対応できるとは限らないため、導入事例を確認したり対応可否を問い合わせたりするのが有効です。また、一部のエンジニア派遣サービスには、SREの実現を専門的に提供する企業もあるためチェックしておきましょう。
技術的な課題への理解度があるか
IaCやDevOpsなど、SREに関連する観点を派遣会社が理解しているかどうかもチェックしましょう。SREの根幹をなす概念や技術についての理解が浅いと、自社が抱える課題に対する的確な人材提案は困難です。
SREの導入で求めるべき人材は、単純にプログラミングに対応できるエンジニアではありません。システムの信頼性を高めるための運用設計や、問題を可視化する可観測性の改善に強みのある人材が理想的です。
一部のエンジニア派遣では、アドバイザーや講師としてのサポートを提供している場合もあります。事前の問い合わせで、サービスの提供範囲やサポート体制について確認しておきましょう。
サポート体制・フォロー体制が整っているか
派遣エンジニアの就業開始後を見据え、定期的なフォローや状況確認をしてくれる体制があるかどうかも確認しておきましょう。システムの信頼性設計や運用改善など、SREの業務は長期的な対応が求められます。そのため、派遣エンジニアが継続的にパフォーマンスを発揮できるような環境づくりが欠かせません。
とくにスキルのミスマッチが起きた場合の対策として、早期交代・フォローアップなどの対応を契約時に確認しておくと安心です。継続的な運用改善を進めるためには、個人の派遣エンジニアだけでなく、派遣会社自体が信頼できるかどうかも見極める必要があります。
契約条件やコストの柔軟性があるか
契約条件や料金体系の柔軟性は、派遣会社を選ぶうえで重視したい観点です。SREの業務はプロジェクトの進捗やシステムの状況によって、求められる対応が変化しやすい特徴もあります。
そのため、事前に以下のような契約内容を確認しておくのが効果的です。
- 派遣契約の料金体系(単価・稼働時間・更新条件など)
- 契約期間の柔軟性(延長・短縮/人材交代の有無・条件など)
また、契約後の仕様変更や急なトラブル対応など、交渉できる業務範囲の柔軟性も確認しておくと安心です。
主体的な改善提案が期待できるか
SREを導入する目的は、現状の運用を維持するだけでなく、継続的に信頼性を高めるための改善です。そのため、主体的に課題を発見しながら改善策を提案できる人材が適しています。
また、派遣会社と自社のコミュニケーションを円滑に進めるためには、以下の観点を確認しておくと安心です。
- 報告の方法・頻度
- フォローアップ体制
とくにDevOpsの推進を期待する場合は、開発・運営チームの間に入る潤滑材としての役割とコミュニケーション能力も求められます。派遣会社との打ち合わせの段階で、自社の状況を理解し、具体的な改善案を提案できるかどうかも確認してみましょう。
SREの外部委託ならフリーランスの活用も効果的
エンジニア派遣は即戦力の確保を期待できる反面、契約の柔軟性や長期的なコストに課題が残るケースもあります。そこで、SREに対応できるエンジニアの確保では、フリーランスの活用を検討するのも効果的です。
ここからは、SREの外部委託先としてフリーランスを活用する3つのメリットを解説します。

即戦力人材を確保できる
フリーランスのSREエンジニアは、専門的な分野で高度なスキルと豊富な経験をもつ傾向があります。とくに以下のような知識は習得に時間がかかるため、経験豊富な外部人材を確保するのが効果的です。
- コンテナ技術(Docker・Kubernetesなど)
- IaCツール(Terraformなど)
- 監視ツール(PrometheusやGrafanaなど)
- DevOpsに関する知識
専門スキルのあるフリーランスエンジニアを確保すれば、プロジェクトの即戦力として活躍を期待できます。また、エンジニア派遣と同様に時間のかかる研修や教育が不要なため、プロジェクトの立ち上げをスムーズに進められます。
柔軟な条件で契約できる
プロジェクトの状況に応じて、柔軟な契約を結びやすいのもフリーランスを活用するメリットです。一般的な派遣契約では契約期間を月単位で指定しますが、フリーランスとの業務委託契約では数週間から数か月まで必要に応じて柔軟に設定できます。
短期的なプロジェクトや一時的な人員補充が必要な場合には、必要な期間に応じて効率的な人材確保が可能です。プロジェクトの進捗状況にあわせて、契約期間の延長・短縮も調整できます。
また、一部のエンジニア派遣で依頼できるようなアドバイザーや講師など、さまざまな役割を依頼できるのもフリーランスならではの魅力です。
コストを最小限に抑えられる
フリーランスエンジニアの活用では、以下のような理由でコストを最小限に抑えられます。
- 個人のフリーランスと直接契約できる
(エンジニア派遣のように手数料の負担がかからない) - プロジェクトの期間にあわせて契約できる
(報酬を固定費ではなく変動費として扱える) - プロジェクトの規模や予算にあわせて人材を確保できる
(人件費を最小限に抑えられる)
ただし、エージェントサービスを利用する場合は、仲介料としてマージンが発生する場合もあります。しかし、契約手続きのサポートなどをエージェントに依頼できる場合もあるため、トータルの費用対効果で判断するのが理想的です。

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SREの導入にエンジニア派遣を活用するメリットは、以下のとおりです。
- SRE経験者を迅速に確保できる
- 採用・教育コストを削減できる
- 外部の知識やノウハウを取り入れられる
ただし、契約の柔軟性や費用対効果には、考慮しておきたいデメリットも少なくありません。とくにSREには単純なエンジニアのスキルだけでなく、プロジェクトの中核として運用改善やチームの連携強化を担う役割も求められます。
SREエンジニアの即戦力としての働きを期待するなら、専門的なスキルをもつフリーランス人材を活用するのも効果的です。
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元エンジニアのWebライター。自動車部品工場のインフラエンジニアとして、サーバー・ネットワークの企画設計から運用・保守まで経験。自分が構築したインフラで数千人規模の工場が稼働している達成感とプレッシャーは今でも忘れられない。
