
自社のインフラ環境を構築・運用する上で、インフラエンジニアにプログラミングスキルが必要かどうかという疑問をおもちではないでしょうか。
限られた人材で効率的に運用を進めるなかで、プログラミングによる業務自動化やトラブル対応の迅速化が求められる場面も少なくありません。
本記事では現役のインフラエンジニアが、インフラエンジニアに必要なプログラミングスキルの有無を明確に解説し、PythonやGoなどの主要な使用言語を紹介します。
さらに、プログラミングスキルをもつエンジニアの採用方法についても解説しますので、ぜひチーム体制の強化や組織づくりの参考にしてみてください。
関連記事:インフラエンジニアが扱うプログラミング言語とは?習熟度の見極め方も紹介
インフラエンジニアにプログラミングスキルは必要か
インフラエンジニアの仕事は多岐にわたりますが、現代においてプログラミングスキルはどの程度必要とされているのでしょうか。
まずは、かつては必須ではなかったこのスキルがなぜ近年重要視されるようになったのか、その背景とともに詳しく解説します。
業務効率の向上を求めるなら必要
インフラエンジニアの仕事は、サーバーやネットワーク、ストレージといったITインフラの設計・構築・運用・保守など幅広いです。
従来、これらの業務は手作業やGUIベースのツールを使って行われることが一般的でした。しかし、近年はシステムの大規模化・複雑化が進み、手作業だけでは追いつかない状況が増えています。
特に、ほとんどの企業のIT部門では限られた人数で多岐にわたるインフラ業務をこなす必要があります。
こうした状況で業務効率を劇的に向上させヒューマンエラーを削減するためには、プログラミングスキルが重要になってきています。
定型的な作業の自動化、複雑な設定の一括適用、障害発生時の迅速な原因特定と復旧など、プログラミングを活用することでより少ないリソースで高品質なインフラ運用を実現できるようになります。
プログラミングスキルが重要視される背景
インフラエンジニアのプログラミングスキルが重要視されるようになった背景には、IT技術の進化とそれに伴うインフラ管理の変化があります。
自動化の必要性
クラウドコンピューティングの普及やマイクロサービスアーキテクチャ(※1)の採用などにより、インフラ環境はより動的で複雑になっています。
これに対応するためには、手作業での運用・保守には限界があり、多くの作業を自動化する必要があります。
サーバーの構築、設定変更、パッチ適用、監視設定、バックアップ、リカバリといった定型作業を自動化することで運用コストを削減し、可用性を高めることができるのです。
プログラミングスキルは、これらの自動化ツールやスクリプトを作成・活用するために必須となります。
※1.マイクロサービスアーキテクチャ … 各機能を独立したサービスとして分離することで、開発の柔軟性や運用の効率性を高めるシステム設計手法のこと
IaCの普及
Infrastructure as Code(IaC)とは、インフラの構築や構成管理をコードとして定義し、自動的に適用する手法です。
これにより手動での設定ミスを防ぎ、再現性の高いインフラ環境を迅速に構築・変更できます。
クラウド環境を中心にIaCの普及は目覚ましいものがあり、多くの企業がTerraformやAnsibleといったIaCツールを導入しています。
2024年12月に発表されたSNS Insiderの調査によると、世界のIaC市場は2023年に約9億1,730万USDでしたが、2032年には約58億6,930万USDに達すると予測されており急速な拡大が見込まれています。
この傾向は日本国内でも同様であり、今後ますます多くの企業がIaCを導入していくと考えられます。
IaCを効果的に活用するためにはコードを書く能力、つまりプログラミングやスクリプトのスキルが不可欠となります。
プログラミングスキルが不要な業務の例
インフラエンジニアの業務すべてに高度なプログラミングスキルが必要なわけではありません。
例えば、以下のような業務は必ずしもプログラミングスキルがなくても対応可能です。
基本的なOSのインストールと初期設定
Windows ServerやLinuxなどのOSをインストールし、IPアドレス設定やユーザー作成
といった基本的な初期設定を行うだけなら、GUIやコマンドラインの操作知識があれば
対応できます。既存のインフラ監視ツールの設定・運用
ZabbixやNagiosなどの既存監視ツールの基本的な設定変更やアラート対応などはツールの
GUI操作が中心となるため、プログラミングスキルは必須ではありません。ベンダー提供のGUIツールを使った機器設定
ネットワーク機器やストレージなどのベンダーが提供するGUIベースの管理ツールを使った
設定作業は、ツール操作の習熟が中心です。ハードウェアの物理的な設置・配線
IT技術は常に進化しており、両者ともに常に新しい技術を学び続ける必要があります。
しかし、これらの業務においてもプログラミングスキルがあれば設定作業の自動化やログ分析の効率化など、さらに高度な対応が可能になります。
そのためプログラミングスキルは必須ではなくとも、もっていることで業務の幅が広がり、より多くの課題に対応できるようになるでしょう。
関連記事:インフラエンジニアの職種内容を徹底解説!人材採用のポイントも紹介
インフラエンジニアが使用する主なプログラミング言語
現代のインフラエンジニアがプログラミングスキルを活かすうえで、どのような言語が使われているのかは重要なポイントです。
インフラ領域で活用される言語はいくつかありますが、特に自動化、クラウド環境の管理、ツール開発などで頻繁に使用される主要な言語があります。
ここでは、それらの代表的なプログラミング言語と、それぞれの特徴や用途について解説します。
- Python
- Go
- JavaScript
関連記事:【一覧表】インフラエンジニアに求めるスキル15選!資格も紹介
Python
Pythonはインフラ分野で最も広く利用されているプログラミング言語の一つです。
その人気の理由は、コードがシンプルで読みやすく学習コストが比較的低い点にあります。
また、インフラ管理や自動化に関連する豊富なライブラリが提供されており、さまざまな用途に活用できます。
Pythonの用途例 |
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多くの自動化ツールやIaCツールとも連携しやすく、インフラ運用の効率化に大きく貢献するでしょう。
Go
Go(またはGolang)は、Googleによって開発されたプログラミング言語です。
Pythonと比較するとコード量は多くなる傾向がありますが、コンパイル言語(※2)であるため実行速度が非常に速いという特徴があります。
また、並行処理が得意で複数の処理を同時に効率良く実行できます。
Goの用途例 |
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Goは静的型付け言語(※3)でありコンパイル時にエラーを検出できるため、大規模なシステム開発や信頼性が求められるツールの開発に適しているでしょう。
処理速度や並行処理の能力を活かしたい場合にマッチする選択肢となります。
※2. コンパイル言語 … ソースコードを実行前に変換(コンパイル)することで、パフォーマンスや安定性に優れた実行環境を実現できるプログラミング言語のこと
※3. 静的型付け言語 … 変数のデータ型を事前に定義し、実行前に型の整合性をチェックできるプログラミング言語のこと
JavaScript
JavaScriptは、主にWebブラウザ上で動作するクライアントサイドの言語として知られていますが、Node.jsの登場によりサーバーサイドやインフラ領域でも利用されるようになりました。
特に、クラウド環境の一部のサービスやWebベースの管理ツール開発で活用されます。
JavaScriptの用途例 |
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PythonやGoほどインフラ全般の自動化スクリプト作成に広く使われるわけではありませんが、特定のクラウドサービスやツールとの連携、あるいはWeb技術を活用したインフラ管理において重要な役割を果たします。
【現役インフラエンジニアのひとこと】 インフラエンジニアとしての15年を超えるキャリアのなかで、私はオンプレとクラウドの両方のインフラを経験しました。 このように、インフラの仕事でもプログラミングが必要になる場面があります。 |
インフラエンジニアが使用するその他の言語
インフラエンジニアが使用する言語は、PythonやGoといった汎用的なプログラミング言語だけではありません。
インフラの管理や自動化においては、特定の目的のために設計されたさまざまな言語が重要な役割を果たします。
ここでは、日々の運用や設定管理で頻繁に登場する「スクリプト言語」と「データ言語」について解説します。
スクリプト言語
スクリプト言語は、比較的簡単なプログラムを手軽に記述・実行するために使われる言語です。
コンパイルという作業が不要で、書いたコードをすぐに実行できるのが特徴です。
インフラエンジニアにとっては、定型的な作業の自動化や複数のコマンドをまとめて実行する際に非常に役立ちます。
スクリプト言語 | 説明 |
Bash(シェルスクリプト) | LinuxやUnix系のOSで標準的に使われるスクリプト言語です。 |
PowerShell | Windows環境でシステム管理機能を提供するスクリプト言語です。 |
バッチスクリプト | Windows環境で古くから使われている、シンプルで手軽なスクリプト言語です。 |
データ言語
データ言語は、プログラムの処理内容を記述するのではなくデータの構造や設定情報を記述するために使われる言語です。
インフラの構築や設定をコードとして管理するIaCにおいて、インフラの状態やリソースの構成を定義する際によく利用されます。
データ言語 | 説明 |
YAML | 「Yet Another Markup Language」の略で、人間が読み書きしやすいように設計されたデータ記述形式です。 |
HCL(HashiCorp Configuration Language) | IaCツール「Terraform」をはじめとするHashiCorp製品の設定記述に特化した言語です。 |
※4. コンテナオーケストレーションツール … コンテナ化されたアプリケーションを自動で配置・拡張・復旧できるように管理するためのツールのこと
プログラミングスキルをもつインフラエンジニアのメリット
プログラミングスキルをもつインフラエンジニアは、単にサーバーやネットワークを管理するだけでなく、ITインフラ全体の運用に変革をもたらす存在となります。
特に、限られたリソースで効率的なインフラ運用を目指す企業にとって、彼らがもたらすメリットは非常に大きいでしょう。
ここでは、プログラミングスキルをもつインフラエンジニアをチームに迎え入れることの具体的なメリットを3つご紹介します。
- 運用効率の向上とコスト削減
- セキュリティ強化の実現
- 柔軟なインフラ構成管理
運用効率の向上とコスト削減
プログラミングスキルをもつインフラエンジニアは、手作業で行っていた定型業務を自動化できます。
例えば、複数のサーバーに対するソフトウェアのインストールや設定変更、ログの収集、定期的なレポート作成などをスクリプトやコードで自動化することで、作業にかかる時間を大幅に短縮し人的ミスを削減できるのです。
これにより、インフラ担当者はより戦略的な業務や高度なトラブルシューティングに時間を割けるようになり、チーム全体の生産性が向上します。
結果として運用にかかるコストを削減し、リソースを最適に活用することが可能になるでしょう。
関連記事:ITインフラの運用自動化とは?重要性とメリット成功事例も紹介
セキュリティ強化の実現
セキュリティ対策はインフラ運用において最も重要な要素の一つです。
プログラミングスキルをもつエンジニアは、セキュリティパッチの自動適用やセキュリティ設定の一貫性チェックをコードで行うことができます。
これにより、システムを常に最新かつセキュアな状態に保ちやすくなります。
また、ログ分析スクリプトを作成して不審なアクセスや異常な挙動を自動で検知したり、ファイアウォールなどのセキュリティ設定をコードで管理して変更ミスを防いだりすることも可能です。
このように、プログラミングを活用することでセキュリティレベルを継続的に高く維持し、インシデント発生のリスクを低減できます。
関連記事:ITインフラにおけるセキュリティとは?重要性と企業の被害事例・対策も解説
柔軟なインフラ構成管理
Infrastructure as Code(IaC)の考え方に基づき、プログラミングスキルをもつエンジニアはインフラ構成をコードとして管理できます。
これにより、開発環境・ステージング環境・本番環境といった異なる環境間での設定の差異をなくし、常に一貫性のあるインフラを維持できるのです。
また、コードを変更するだけでインフラ構成を変更したり、必要に応じて迅速にテスト環境を構築・破棄したりすることも容易になります。
インフラ構成がコードとしてバージョン管理されるため、変更履歴の追跡や問題発生時の迅速なロールバックも可能となり、変化に強く柔軟なインフラ運用体制を構築できます。
関連記事:ITインフラとは?種類と構成要素・エンジニアの仕事内容も解説
プログラミングスキルをもつインフラエンジニアの採用方法
プログラミングスキルをもつインフラエンジニアが、自社のインフラ運用にもたらすメリットをご理解いただけたかと思います。
では、実際にそのような人材をチームに迎え入れるにはどのような方法があるのでしょうか。
主な採用方法として、「正社員採用」と「フリーランス活用」の二つが考えられます。
それぞれの特徴を理解し、自社の状況に最適な方法を選択することが重要です。
関連記事:インフラエンジニアの求人倍率と動向を確認|効率的な採用方法も解説
正社員採用
メリット | デメリット |
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プログラミングスキルをもつインフラエンジニアを正社員として採用することは、自社のインフラ体制を中長期的に強化し、組織内に技術的な知見やノウハウを蓄積していくための基本的なアプローチです。
自社のビジネスや既存のインフラ環境を深く理解してもらい、腰を据えてインフラ基盤の設計から日々の運用改善まで一貫して担当してもらうことを期待する場合に適しています。
チームの一員として他のメンバーとの連携を深め、組織全体の技術力向上にも貢献してもらえる可能性もあるでしょう。
ただし、高度なスキルをもつインフラエンジニアは市場での競争が激しく、採用活動には多くの時間とコストがかかることが一般的です。
関連記事:インフラエンジニア採用が難しい理由と成功する企業の採用戦略を解説
フリーランス活用
メリット | デメリット |
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フリーランスエンジニアは、働き方の多様化や特定の専門スキルへのニーズの高まりを背景に近年注目されています。
フリーランス活用により、比較的低コストで必要なスキルをもつ人材を必要な期間だけ外部から柔軟に迎え入れることが可能です。
特に、「すぐにインフラ運用を効率化したい」「特定の技術課題を解決したい」「正社員採用にかける時間やコストが限られている」といった課題をおもちの場合、フリーランスの活用は非常に有効な選択肢となり得ます。
関連記事:インフラエンジニア案件をフリーランスに業務委託する方法とメリットを解説
プログラミングスキルをもつインフラエンジニアならクロスネットワークがおすすめ
本記事では、現代のインフラ運用においてプログラミングスキルが重要視されていることや具体的な使用言語、プログラミングスキルをもつエンジニアがもたらすメリットについて解説しました。
特に、運用効率の向上やコスト削減、セキュリティ強化、そしてIaCによる柔軟なインフラ管理を実現するためにはプログラミングの知識と経験をもつ人材の存在が重要です。
しかし、こうした高度なスキルをもつインフラエンジニアを正社員としてすぐに採用するのは容易ではありません。
採用市場での競争は激しく、自社の求めるスキルセットに合致する人材を見つけるには時間もコストもかかります。
そこで、プログラミングスキルをもつインフラエンジニアを迅速かつ柔軟に確保したいという場合には「クロスネットワーク」がおすすめです。
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- クロスネットワークの特徴
- クロスネットワークに登録しているインフラエンジニア参考例
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インフラエンジニア兼Webライター。金融業界の汎用機系エンジニアとしてキャリアをスタート。その後Web系システムのクラウド分野に転向し独立。本職の傍らSEOを学び、ライティングやディレクションの一部業務も経験。得意分野はAWS。