ネットワークエンジニアの運用保守とはどんな業務?仕事内容と年収・必要なスキルなどを解説

ネットワークエンジニアの運用保守とはどんな業務?仕事内容と年収・必要なスキルなどを解説

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企業のITインフラを支えるうえで、ネットワークの安定稼働が欠かせません。

とくに、近年は既存インフラの老朽化やそれに伴う不具合が増加傾向にあり、ネットワークの運用保守は不可欠です。自社でもネットワークの運用保守に長けた人材を採用したい企業は多いでしょう。

しかし「ネットワークエンジニアの運用保守がどのような内容か知らない」「何を基準に採用をすれば良いかわからない」と悩む企業は少なくありません。求める人材が不明瞭なまま採用すると、コストと時間が無駄になってしまいます。

そこで本記事では以下の内容について解説します。

  • ネットワーク運用保守の仕事内容

  • ネットワークエンジニアの運用保守に必要なスキル

  • 運用保守に長けたネットワークエンジニアを採用する方法

本記事を最後まで読めば、ネットワークエンジニアの運用保守がどのような仕事か理解し、自社が求める人材像と効果的な採用方法を把握できます。ネットワークの運用保守人材を探しているIT担当者、中小企業の経営者は参考にしてください。

ネットワークエンジニアの運用保守とは

ネットワークエンジニアの運用保守とは、ネットワークの安定稼働を維持するために管理・監視・対応などを行うことです。具体的には、障害検知、セキュリティ管理、パフォーマンス最適化、設定変更などが当てはまります。

ネットワークの運用保守を怠ると深刻な被害が想定されます。アメリカのIT調査会社Enterprise Management Associatesによると、2024年時点で計画外IT障害の平均コストは1分あたり14,056ドルとの結果が発表されました。

またDXの加速で企業活動のネットワーク依存度は年々高まっており、ネットワークのダウンタイムがビジネスに与える影響はますます深刻化しています。

ネットワークの運用保守は単なるITインフラの維持活動ではなく、ビジネスの継続性を保証する戦略的活動と位置づけられるでしょう。

運用と保守の違い

運用と保守は混同して使いやすい用語ですが、以下の表のような違いがあります。


比較項目

運用

保守

主な目的

システムの日常的な稼働管理

システムの機能・性能維持

タイムフレーム

日常的・継続的

定期的・計画的または緊急時

内容

リソース監視
ユーザー管理
セキュリティ対策
トラフィック管理
パフォーマンス監視
問題発生時の一次対応

ハードウェアメンテナンス
ソフトウェア更新
セキュリティパッチ適用
予防的メンテナンス
障害修復
性能最適化

スキル要件

運用手順の知識
監視ツールの操作
トラブルシューティング

詳細な技術知識
修理・更新技術
高度な問題解決能力

運用と保守の違いはシステムに変更を加えるか否かにおおきな違いがあります。

運用は、ITインフラを日常的に稼働させるために、ネットワーク監視や利用状況の把握などシステムの状態をチェックすることです。一方で、保守はシステムの状態を最適に保つために、機器の修理やソフトウェアの更新が伴います。

ただし、両者を明確に分けずに「運用保守」として一体的に扱うケースも珍しくありません。ネットワークの安定稼働には両方のバランスが重要であり、どちらかが欠けても企業活動に支障をきたす恐れがあります。

ネットワーク運用保守が必要な背景

ここではネットワークの運用保守が必要な背景について解説します。

  • リモートワークの普及

  • セキュリティ上の脅威

  • 厳正なコスト管理

リモートワークの普及

リモートワークの普及により、ネットワーク運用保守の重要性が高まっています。

リモートワーク対応のためには、VPN(仮想プライベートネットワーク)の構築や拡張、クラウドサービスとの連携強化、社外からのアクセス制御など、新たな技術を取り入れる必要があります。

たとえば、リモートデスクトップ接続を安全に提供するためには、適切なファイアウォール設定や多要素認証が欠かせません。また、オンライン会議が日常化したことで、安定した帯域の確保も課題となっています。

このような状況下では「社内ネットワークにつながらない」「動画のストリーミングが遅い」といった問題が業務効率の低下を招く可能性があります。安全かつ快適なリモート環境を実現するうえで、ネットワークの運用保守が重要視されているのです。

セキュリティ上の脅威

ネットワークを取り巻くセキュリティ脅威は年々高度化・巧妙化しており、中小企業も標的になりやすくなっています。

サイバーセキュリティ事業を展開するパロアルトネットワークス社の日本国内の中小企業のサイバーセキュリティに関する実態調査によれば、中小企業の約44%がサイバー犯罪の被害を経験していると発表しています。

サイバー攻撃を許してしまうと、顧客の機密情報や自社の知的財産の漏洩につながるでしょう。その結果、信用失墜による取引停止や損害賠償など、経営を揺るがす事態になりかねません。

とくに注意すべき脅威として、以下のようなサイバー攻撃が挙げられます。

  • ランサムウェア攻撃:データを暗号化して身代金を要求

  • フィッシング詐欺:偽メールなどで認証情報を窃取

  • マルウェア感染:バックドアを仕掛けられ情報流出

  • DDoS攻撃:サービスやシステムを機能停止に追い込む

このような脅威に対抗するためには、単にセキュリティ製品を導入するだけでは間に合わないケースもあります。日常的な監視や最新の脆弱性情報の収集・対応など、専門的な運用保守が不可欠です。

厳正なコスト管理

ITインフラのコストを適正化するうえでも、ネットワークの運用保守は欠かせません。

とくに中小企業では、限られた予算の中で最大の効果を得る必要があります。一般的に、計画的にネットワークを保守すれば、事後対応のコストは小さくなるケースが多いです。

運用保守の最適化によるコスト削減効果の例を以下の表にまとめました。


項目

場当たり対応

計画的保守

削減効果

障害発生の頻度

月2〜3回

月0〜1回

約70%減

平均復旧時間

4時間

1時間以内

約75%減

年間ダウンタイムコスト

約240万円

約60万円

約75%減

保守作業工数

不定期・高負荷

計画的・平準化

約40%減


運用保守は付加価値を生み出しにくいため、どうしても疎かにする傾向にあります。しかし、起こりうる事業への影響を踏まえると、ネットワークの運用保守は手を抜けない工程です。

ネットワーク運用保守の仕事内容

一口にネットワークの運用保守といっても、中身はかなり多様化しています。ここではネットワーク運用保守の主な仕事内容について解説します。

  • ネットワーク監視

  • 構成管理

  • セキュリティ強化

  • ソフトウェアのアップデート

  • ハードウェアの修理・交換

  • トラブル対応

  • 問い合わせ対応

  • マニュアル整備

これらの業務を適切に実施することで、ネットワークトラブルの削減、業務効率の向上、セキュリティリスクの軽減につながります。

ネットワーク監視

ネットワーク監視とは、ネットワークの状態を常に把握し、異常の兆候を素早くキャッチする業務です。

監視ツールを使うことで、帯域使用率やサーバーの負荷状況、接続状態などを常時チェックできます。たとえば、通常だと30%程度の帯域使用率が突然80%に跳ね上がったとしたら、何かの異常が発生しているかもしれません。

中小企業では完全な24時間有人監視は現実的でないので、異常時に自動でアラートを発する仕組みを導入している事例もあります。「この部分だけは絶対に止まってはいけない」という重要システムに対してだけでも監視を強化することで、コストを抑えながら効果的な運用が可能になるでしょう。

監視対象としては、ネットワーク機器(ルーター、スイッチなど)、サーバー、重要なアプリケーション、セキュリティ関連の状態などが含まれます。これらの監視により、問題がおおきくなる前に対処できるのです。

構成管理

構成管理とはネットワークの設計図を常に最新の状態に保つ作業です。

具体的には、ネットワーク構成図、IPアドレス一覧、機器リスト、設定情報などの文書を作成・更新する業務を指します。社員が数十名程度の会社でも、サーバーやネットワーク機器は意外と多く、それらの関係性を把握しておくのは非常に重要です。

たとえば「このサーバーが落ちるとどのシステムに影響があるのか」「このネットワーク機器の設定はどうなっているのか」といった情報をすぐに確認できるようにしておくことで、トラブル対応の時間を短縮できます。

また、機器の追加や設定変更があった場合、必ず構成管理情報も更新する習慣をつけることが大切です。緊急時に古い情報で対応するとトラブル対応が後手に回るため、構成の頻繁な管理が必要です。

セキュリティ強化

多くのネットワークはサイバー攻撃の標的になっているため、盤石のセキュリティ構築が重要です。

具体的な業務には、ファイアウォールの設定・管理、アクセス制御の実施、不正アクセスの監視、セキュリティポリシーの策定と運用などがあります。

とくに注意したいのは、リモートワーク環境のセキュリティです。VPN接続の管理、多要素認証の導入、端末のセキュリティ対策などを適切に行わないと、社員の自宅PCがセキュリティ上の弱点になりかねません。

また、定期的なセキュリティ診断でネットワークの弱点を発見し、対策を打つこともネットワークエンジニアの役割。万が一、セキュリティインシデントが発生した場合の対応手順も事前に策定しておくことで、サイバー攻撃の被害を抑えることができます。

ソフトウェアのアップデート

ソフトウェアのアップデートは、セキュリティ対策と安定稼働の両面で非常に重要な業務です。

OSやアプリケーション、ファームウェアなどのアップデートを適切に行うことで脆弱性を取り除け、新機能の恩恵も受けられます。具体的な業務内容を以下にまとめました。

  • Windows Server、LinuxなどサーバーOSのセキュリティパッチ適用

  • ルーター、スイッチなどネットワーク機器の更新

  • データベースサーバー、Webサーバーなどのバージョンアップ

  • セキュリティソフトの更新

ただし、むやみにアップデートするのは危険です。とくに重要なシステムでは、事前にテスト環境で検証し、計画的に更新を行うことが重要。アップデート後に不具合が発生した場合の切り戻し手順を検討するのも、ネットワークエンジニアの仕事です。

ハードウェアの修理・交換

ネットワーク機器やサーバーなどのハードウェアは、いつかは必ず故障します。そのときに迅速に対応できる体制を整えることが、ダウンタイムを最小限に抑える鍵となります。

ハードウェア保守の主な業務には、定期点検、故障時の修理・交換、機器の増設・移設などがあります。とくに重要なのは、主要機器の予備を用意しておくことと、機器の寿命を把握して計画的に更新することです。

たとえば、企業の基幹ネットワークを支えるスイッチが故障した場合、交換機が手元になければ、調達に時間がかかり業務停止が長引きます。重要度に応じて予備機を確保しておくことが、BCP(事業継続計画)の観点からも重要です。

また、ハードウェアにも寿命があります。メーカーのサポート期限を確認し、計画的に更新することで、突然の故障リスクを減らせます。

トラブル対応

ネットワークトラブルは企業活動におおきな影響を与えます。そのため、迅速なトラブル対応もネットワークエンジニアが担う仕事です。トラブル対応の基本的な流れは、以下のようになります。

  1. 問題の切り分け:どこで問題が発生しているかを特定する
  2. 原因の究明:なぜその問題が発生したのかを調査する
  3. 応急処置:一時的に問題を解消し、業務を再開させる
  4. 恒久対策:同じ問題が再発しないよう根本的な対策を実施する
  5. 報告・記録:トラブルの内容と対応策を文書化する

大切なのはトラブル対応の経験を蓄積し、ナレッジ化していくことです。過去に発生した問題とその解決方法を記録しておくことで、同様のトラブルが発生した際に迅速に対応できるようになります。

また、重大なトラブルに備えて、連絡体制や対応手順を事前に決めておくことも大切です。誰がどんな役割を担い、どのような優先順位で対応するかを明確にしておくことで、混乱を最小限に抑えられるでしょう。

問い合わせ対応

ネットワーク運用保守には、ユーザーからの問い合わせに対応する業務も含まれます。リモートワークが増えた現代では「接続できない」「動作が遅い」などの問い合わせは増加傾向にあります。

問い合わせ対応の効率化のためには、以下のような工夫が有効です。

  • FAQ(よくある質問と回答)の整備と公開

  • チケット管理システムの導入による対応状況の可視化

  • 問い合わせ内容の分析によるよくある問題の改善

問い合わせを通じて得られるユーザーの声は、ネットワークの改善に役立つ貴重な情報源です。「この機能が使いにくい」「ここが遅い」といった声を集約し、計画的に改善していくことで、ユーザー満足度の向上につながります。

また、技術的な説明だけでなく、ユーザーの立場に立った丁寧な対応が重要です。専門用語を避けてわかりやすい表現を心がければ、信頼できるネットワークエンジニアとして認められるでしょう。

マニュアル整備

効率的なネットワーク運用保守のためには、各種マニュアルの整備が欠かせません。マニュアルがあることで、担当者が不在でも他のスタッフが対応できるようになり、属人化を防ぐことができます。

整備すべき主なマニュアルには、以下のようなものがあります。

  • 運用手順マニュアル:日常的な監視・管理作業の手順

  • 障害対応マニュアル:トラブル発生時の対応手順

  • 復旧手順マニュアル:システム障害からの復旧方法

  • ユーザー向けマニュアル:社員が利用するためのガイド

マニュアル作成のポイントは、誰が見てもわかるように作ることです。専門用語を極力避け、図や写真を多用するなど工夫しましょう。また、定期的にマニュアルを見直して最新の状態に保つことも大切です。

なお、マニュアル整備は1度に完璧にする必要はありません。まずは最も重要な作業や頻繁に発生するトラブルの対応手順から整備し、徐々に充実させていくアプローチが現実的です。

ネットワークエンジニアの年収相場は約550万円

ネットワークエンジニアの年収相場は約550万円といわれていますが、この数字はスキル・経験、業務内容、稼働時間によっておおきく変動します。つまり、単純な技術力だけでなく、どのような業務を担当し、どれだけの時間を費やすかによって、適正な報酬額が決まります。年収に大きく影響するポイントは以下の3つです。

  • スキル・経験

  • 業務内容

  • 稼働時間

スキル・経験

ネットワークエンジニアの年収はスキルと経験に応じて大きく変動します。一般的に、以下のような経験年数別の年収相場があります。

  • 未経験〜経験1年未満:250万〜400万円

  • 経験1〜3年:300万〜500万円

  • 経験3〜5年:300万〜600万円

  • 経験5〜10年:500万〜700万円

  • 経験10年以上:700万円〜

とくに価値が高い経験としては、パブリッククラウド(AWS、Azure、GCP等)の構築・運用、セキュリティ対策、大規模ネットワークの設計などが挙げられるでしょう。これらのスキルをもつエンジニアは、平均より高い年収を得ている傾向にあります。

企業側としては、必要なスキルレベルを明確にし、それに見合った報酬設定をすることが重要です。高いスキルをもつエンジニアは高額ですが、問題解決能力が高く、長期的には投資対効果が高いケースが多いです。

関連記事:ITインフラ業務におすすめの資格11選!取得へのロードマップ・仕事内容・即戦力の採用方法も紹介

業務内容

ネットワークエンジニアの年収は、担当する業務内容によっても大きく異なります。一般的に、上流工程(設計)に携わるエンジニアの方が、下流工程(構築・運用保守)よりも高い傾向にあります。

具体的な業務内容別の年収相場を下の表にまとめました。


業務内容

平均年収

特徴

設計

600〜900万円

要件定義から設計書作成まで担当
高度な知識と経験が必要

構築

600〜800万円

設計書に基づき実際にネットワークを構築
トラブルシューティング能力が重要

運用保守

350〜500万円

日常的な監視・管理業務
障害対応や機器更新などトラブル対応力が重要

また、特殊なスキルや業務を担当する場合は、さらに年収が上がることもあります。たとえば、セキュリティやクラウドに長けたネットワークエンジニアは、高い市場価値をもっています。

中小企業だと、1人のエンジニアが複数の業務領域を担当することも多いでしょう。マルチスキルをもつエンジニアは、柔軟な対応ができる点で価値が高いと言えます。

関連記事:【企業向け】ネットワークエンジニアの平均年収とは?年代・働き方・スキル別に解説

稼働時間

ネットワークエンジニアの年収は、稼働時間や勤務形態によっても変動します。運用保守では、年中無休の体制が求められることも珍しくありません。そのため、夜間や休日の対応が必要な場合は、それに見合った報酬が設定されるのが一般的です。一例として筆者の現場の例を紹介します。

  • 夜間対応あり:40万円~60万円(年間)

  • 休日対応あり:7,000円~1万円(1回につき)

重要なシステムでは、トラブル発生時に迅速に対応できる体制が求められます。そのため、常時監視やオンコール体制を敷くことが多く、その分の待機手当や深夜手当が考慮されることもあります。

人材採用を検討する場合、残業や休日出勤の可能性も含めて、適切な待遇を設定することが重要です。無理な勤務条件はエンジニアの離職につながり、結果的に高いコストを支払うことになりかねません。

関連記事:ネットワークエンジニアの単価相場とは?単価を抑える方法や単価交渉の進め方など解説

ネットワークエンジニアの運用保守で求められるスキル

ネットワークエンジニアの運用保守には以下のような多様なスキルが必要とされます。

  • ネットワーク機器の設定・操作スキル

  • OSの設定・操作スキル

  • クラウド運用スキル

  • サーバー運用スキル

  • セキュリティスキル

  • プログラミングスキル

  • ヒューマンスキル

  • コンセプチュアルスキル

ネットワーク機器の設定・操作スキル

ネットワークエンジニアには多様なネットワーク機器を適切に設定・操作するスキルが欠かせません。ルーターやスイッチ、ファイアウォールなどの機器を扱えることはもちろん、それらを最適な状態で連携させる知識も重要となります。

とくに中小企業では、限られた予算内で最大限のパフォーマンスを発揮させる設定能力が求められるため、コスト効率の良いネットワーク構成を提案できるスキルも必要です。

また、ネットワーク障害の切り分けや原因特定、復旧までの一連の流れを素早く行えることも重要なスキルとなります。

リモートワーク環境を支えるVPNやネットワークの冗長化など事業継続性を確保するための設定スキルも、ネットワークエンジニアに求められています。

OSの設定・操作スキル

ネットワークエンジニアにとってOSの設定・操作スキルは、トラブルシューティングの幅を大きく広げる重要な能力です。

WindowsやLinuxなど複数のOSに精通していることで、サーバーやクライアント端末の問題解決が迅速に行えるようになります。

また、OSのセキュリティパッチ適用やアップデート管理も重要な業務。システム全体の安定性とセキュリティを維持するための基本となるスキルです。

リモートワーク環境では、さまざまなOSが混在するケースも増えているため、複数のプラットフォームに対応できる柔軟性も現代のネットワークエンジニアには必須となっています。

クラウド運用スキル

クラウドサービスを活用した効率的なネットワーク運用スキルも不可欠です。

AWSやAzure、Google Cloudなどの主要クラウドプラットフォームの基本的な知識と操作スキルは、コスト削減と業務効率化の両立に直結するからです。クラウド環境でのネットワーク設計、VPC(仮想プライベートクラウド)の構築、セキュリティグループの設定など、オンプレミスとは異なる技術への対応力も求められます。

予算に限りがある企業にとって、安価な初期投資と拡張性・柔軟性を確保できるクラウドは有効な技術。クラウドを使いこなせるネットワークエンジニアの価値は高いと言えるでしょう。

サーバー運用スキル

サーバー運用スキルはネットワークエンジニアの業務範囲を大きく広げ、一元的なIT管理を可能にする重要な能力です。

ファイルサーバーやメールサーバー、データベースサーバーなど、ビジネスに不可欠なサーバーシステムの構築・運用知識があれば、ネットワークとサーバーの問題を総合的に解決できます。サーバーのリソース管理やパフォーマンスチューニングのスキルは、システム全体の最適化につながり、ユーザー体験の向上につながるでしょう。

中小企業では専任のサーバー管理者を置くことが難しいケースも多いです。そのため、ネットワークとサーバーの両方を担当できるエンジニアは重宝されるでしょう。

セキュリティスキル

ネットワークエンジニアには高度なセキュリティスキルが求められています。ファイアウォールの適切な設定やウイルス対策、不正アクセス検知など、基本的なセキュリティ対策を確実に実施できる知識が必要です。

とくに、近年増加しているランサムウェア(※)や標的型攻撃への防御策を理解し、実装できる能力は、企業の事業継続性を確保するうえで欠かせません。また、定期的なセキュリティ監査やログ分析を通じて、潜在的な脅威を早期に発見し対処するスキルも必要です。

限られた予算内で最大限のセキュリティレベルを確保するために、費用対効果の高い対策を提案できる能力も求められています。

※ランサムウェア:データを不正に暗号化して、復旧の見返りに金銭のような対価を要求するソフトウェア

関連記事:ITインフラにおけるセキュリティとは?重要性と企業の被害事例・対策も解説

プログラミングスキル

ネットワークエンジニアにもプログラミングスキルが求められる場面が増えています。自動化やカスタマイズによる業務効率化で、運用保守の品質が向上するためです。

ネットワークの運用保守でよく使われるプログラミング言語は以下のとおりです。


プログラミング言語

主な特徴

主な用途

Python

コードが読みやすい
豊富な標準ライブラリ
(※1)オブジェクト指向対応

Web開発
データ分析
AI
業務自動化など

Bash(シェル)

UNIX/Linux標準のシェル
テキスト処理が得意
スクリプトで自動化が容易
環境依存が強い

サーバー運用
バッチ処理
システム管理

PowerShell

オブジェクト指向型シェルスクリプト(※2)
Windows標準

 Windows管理・自動化
クロスプラットフォーム(※3)

Go

高速実行
並行処理が容易
クロスプラットフォーム対応

サーバー開発
クラウドサービス

(※1)オブジェクト指向:物ごとを部品(オブジェクト)として捉える概念
(※2)シェルスクリプト:PCにしてほしい作業を順番に書いた台本のようなもの
(※3)クロスプラットフォーム:1つのソフトやアプリが、WindowsやMac、スマホなど多様な機械やシステムで同じように使えること

基本的なプログラミング知識があれば、繰り返し行われる設定作業や監視タスクを自動化できます。

また、複数拠点のネットワーク管理や大量の機器設定を要する環境では、自動化スクリプトの作成・実行能力が作業時間と人的ミスを大幅に削減するでしょう。

関連記事:ネットワークエンジニアに必要な言語とは?人材採用のポイントも解説

ヒューマンスキル

ネットワークエンジニアには技術スキルだけでなく、対人コミュニケーションや問題解決といったヒューマンスキルも不可欠です。

専門的な内容をわかりやすく説明できる能力は、提案の採用率や信頼関係の構築に直結するからです。

とくに障害発生時には、冷静な対応と的確な状況説明、復旧見込みの提示などが求められます。つまり、エンジニアのヒューマンスキルがチーム全体のパフォーマンスを高めることになります。また、ユーザーからの問い合わせや要望に対して共感的に対応し、真のニーズを引き出すヒアリング能力も欠かせません。

このようなヒューマンスキルは、どの工程・ポジションにおいても不可欠です。

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは、正解のない問題に直面したときに、本質を見極め、周囲が納得できる最適解を導き出す能力のことです。具体的な構成要素と例を下にまとめました。


コンセプチュアルスキルの構成要素

概要・事例

思考系

ロジカルシンキング

障害の原因究明を論理的に進める

ラテラルシンキング

従来の設計にとらわれないアーキテクチャの提案

クリティカルシンキング

既存の問題点を批判的に分析

視点・柔軟性

多面的視野

セキュリティ、パフォーマンス、コスト、運用面から総合的に判断

柔軟性

クラウドファーストなど業界トレンドへの適応

受容性

新しいベンダーや技術への理解

探求・応用

知的好奇心・探求心

新しい技術の継続的な学習

応用力

既存技術を別の課題解決に活用

洞察力

ネットワークトラフィックから将来の設備投資を予測

実行

直観力

経験に基づく迅速な判断

チャレンジ精神

クラウドネイティブなど新領域への挑戦

俯瞰力

個別システムではなく、企業全体のIT基盤としての視点

先見性

IoT、5G時代のネットワーク要件の予測

ネットワークエンジニアには、複雑な障害対応や新技術導入判断において、技術面だけでなく全体を俯瞰する視点が求められています。とくに責任が高まるほどコンセプチュアルスキルの重要性が増します。

過去の経験から成功・失敗の本質を抽象化・定義し、プロジェクトに落とし込むことで高品質な運用保守を期待できるでしょう。

ネットワークエンジニアの採用方法

ネットワークエンジニアの採用は、企業のITインフラを支える重要な意思決定です。ここではネットワークエンジニアの採用ルートについて解説します。


主な採用ルート

メリット

デメリット

転職エージェント

専門的な視点での候補者評価
非公開求人によるアプローチ
面接調整・条件交渉の代行

 エージェントによって得手不得手がある

スカウト

候補者に直接アプローチ
一般求人より高い開封率

大量採用に適さない

SNS

潜在層へのリーチが可能
自社に共感する候補者を惹きつける

 効果が出るまで時間が必要

炎上リスクが存在

リファラル

質の高い紹介を期待できる
入社後ミスマッチ軽減

人材が偏る可能性

フリーランス

即戦力として活用可能
プロジェクトベースでの柔軟な活用

人材によるモチベーションの差がある

転職エージェント

転職エージェントの活用は、ネットワークエンジニア採用において最も効率的かつ効果的な方法の一つです。

スキルセットやキャリア志向など専門的な視点で候補者を評価し、自社の要件に合った人材を厳選して紹介してくれます。

とくに非公開求人を多く保有しているエージェントでは、現在転職活動をしていない優秀なエンジニア(潜在候補者)にもアプローチできる点が強みです。また、候補者の面接調整や条件交渉などの煩雑な業務を代行してくれるため、採用担当者の負担を軽減できるでしょう。

注意点として、転職エージェントによって扱える人材に得手不得手があります。ネットワークエンジニアを探すなら、IT専門の転職エージェントに相談するのがおすすめです。

関連記事:インフラエンジニア採用にエージェントを活用するメリットと選び方を解説

スカウト

スカウトとは、特定のスキルや経験をもつ人材に直接アプローチする採用方法です。

リクナビNEXTやDODAなどの転職サイトのスカウト機能を活用すれば、条件に合った候補者に直接アプローチすることができます。

求めるスキルや経験が明確な場合、スカウトメールの開封率や返信率は一般的な求人広告よりも高く、効率的な採用活動が期待できるでしょう。

また、LinkedIn等のビジネスSNSで活躍しているエンジニアに直接コンタクトを取る方法も、専門人材にアプローチする有効な手段となります。

デメリットは、大量採用に適していないことです。原則採用担当者と求職者の一対一の採用活動になるため、無理に候補者を増やすと担当者の負担が増えます。その他の採用手段とあわせて利用しましょう。

関連記事:インフラエンジニアをスカウト採用するメリットや成功させる方法を解説

SNS

SNSでの採用活動は、ネットワークエンジニアの潜在層にリーチできる有効な採用方法です。

LinkedInやX(旧Twitter)、Facebookなどのプラットフォームでは、技術コミュニティに積極的に参加している優秀なエンジニアとの接点を作ることができます。

また、企業の技術的な取り組みや職場環境をSNSで発信し続けることで、自社の文化に共感する候補者を自然と引き寄せる効果も期待できます。

デメリットは自社が認知されるまで時間がかかることです。継続的な発信が必要なうえに不適切な投稿があると炎上する可能性もあります。すぐに効果を求めるのではなく、地道な発信活動が重要と言えるでしょう。

リファラル

リファラルとは社員の知人・友人などを紹介してもらう採用方法のことです。

専門性の高いエンジニアの間では、同じ技術コミュニティや過去の職場でのつながりがあることも多く、質の高い紹介を期待できるでしょう。

また、紹介者がある程度事前に社風や仕事内容を説明していることが多いため、入社後のギャップによる早期離職リスクも低減される傾向にあります。

デメリットは人材が偏る可能性があること。性格やスキルセットが似通りやすくなるので、一部の社員だけにリファラルを任せないよう注意しましょう。

フリーランスへの業務委託

フリーランスとは、企業に雇用されず業務委託契約を結んで案件をこなす人材のことで、いま注目されている人材の一つです。ITフリーランス及びフリーランスエージェント市場白書 2025によると、2028年にITフリーランスの人口は45万人を超え、国内IT人材の40%を占めるとの試算を出しました。

場所や時間に縛られにくいワークスタイルと、自分のスキル・経験次第で収入を高められる点からフリーランスに転向する人が増えています。企業としても、即戦力の確保やコストの適正化、プロジェクトごとに起用できる柔軟性など、多様なメリットを得ることができます。

注意点として、報酬や業務内容によってモチベーションを左右される人材がいることです。優秀なフリーランスを確保するために、魅力的な待遇やキャリアアップの機会などを提示しましょう。

関連記事:インフラエンジニア案件をフリーランスに業務委託する方法とメリットを解説

フリーランスのネットワークエンジニアを活用するメリット

フリーランスのネットワークエンジニアを活用するメリットは以下のとおりです。

  • 即戦力を確保できる

  • 人件費を削減できる

  • 自社の技術力向上を期待できる

即戦力を確保できる

フリーランスのおおきなメリットは、即戦力をすぐに確保できることです。

フリーランスのネットワークエンジニアは、さまざまな企業での経験を積んでおり、多様な環境でのベストプラクティスや最新技術の知見をもっていることが多いです。

エンジニアが不足している企業だと、専任のネットワーク担当者を置くことが難しい場合もあります。急なネットワーク対応が必要な場合、フリーランスエンジニアの活用はおおきな助けとなるでしょう。

人件費を削減できる

フリーランスのネットワークエンジニアを活用することで、人件費を大幅に削減できる可能性があります。

正社員として雇用する場合、給与に加えて社会保険料や福利厚生費、教育研修費などのコストが発生します。一方、フリーランスエンジニアの場合は契約した業務の対価のみを支払えば良いのです。

また、月額固定や時間単価での契約など柔軟な対応が可能で、自社の必要リソースにあわせて外注することができます。

常時フルタイムのネットワークエンジニアが必要でない場合やプロジェクトの期間のみ人材が必要な場合に、有効な選択肢となるでしょう。

自社の技術力向上を期待できる

フリーランスのネットワークエンジニアを活用すると、自社の技術力向上にも大きく貢献します。

フリーランスエンジニアがもつ知識やノウハウを社内に共有することで、自社のIT担当者のスキルアップにつながるでしょう。長期的に見れば自社の技術力向上というおおきな効果が期待できます。

筆者の職場でもフリーランス人材を起用したときに、自社にはない開発手法や最新の開発環境を教えてもらった結果、運用自動化のノウハウを手に入れました。

エンジニアの採用や育成に時間、コストをかけられない企業にとって、フリーランスエンジニアからの技術的なナレッジ移転はおおきな価値をもつはずです。

ネットワークエンジニアの運用保守に関するよくある質問

最後に、ネットワークエンジニアの運用保守についてよくある質問にお答えします。優秀な人材を採用するために、ここで疑問を解消しておきましょう。

ネットワークの運用保守は未経験でもできる?

ネットワークの運用保守は未経験からでも始められる業務です。ネットワークの運用保守は必要とされるスキル要件が低い傾向にあるからです。

運用保守は監視業務から始めるケースが多く、監視ツールやコマンドを用いてネットワーク機器の状態を確認する「死活監視」や「リソース監視」などの業務を通して、実践的なスキルを身につけることができます。

ただし、まったく知識がない状態よりも、基本的なネットワークの知識やLinuxの基礎コマンドなどを事前に学習しておくと、より早く業務に適応できるでしょう。また、保守スキルは一定の実務経験に左右されるため、知識・経験が豊富なエンジニアも必要です。

ネットワークの運用保守に資格は必要?

ネットワークの運用保守に資格は必須ではありませんが、取得しておくとさまざまなメリットがあります。資格取得を通じて体系的な知識を身につけることができ、自身のスキルを客観的に証明する手段ともなります。

未経験者におすすめなのは「ITパスポート」や「CCNA」などの資格。とくにCCNAはネットワークの基礎知識を網羅的に学べる資格として高く評価されています。

求職者の専門性を見極めたい場合は「LPIC」や「ネットワークスペシャリスト」などの高度な資格を有しているかチェックしましょう。未経験者が難易度の高い資格を取得していたら、入社後の伸びしろに期待できます。

関連記事:ITインフラ業務におすすめの資格11選!取得へのロードマップ・仕事内容・即戦力の採用方法も紹介

ネットワークエンジニアの求人倍率は高い?

ネットワークエンジニアを含むインフラエンジニアの求人倍率は全国的に高くなっています。主な地域の求人倍率は以下のようになっており、5倍を超える地域もあります。

  • 東京:3.57倍

  • 大阪:3.88倍

  • 沖縄:5.29倍

  • 鹿児島:4.98倍

参考:jobtag

背景には、ITの進歩やサイバー攻撃の巧妙化に伴うセキュリティ対策の高度化、安定したネットワーク環境への需要増加などが挙げられます。今後もITインフラ市場とDX関連投資の拡大が予測されており、インフラエンジニアの需要も高い水準が維持されるでしょう。

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本記事では、ネットワーク運用保守の仕事内容と年収、求められるスキル、人材の採用ルートなどについて解説しました。

近はITインフラの拡充に伴い、ネットワークに求められる品質が高まっています。稼働期間も長期にわたるため、運用保守を担うネットワークエンジニアの重要性は増していくでしょう。

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喜多村道秋
記事を書いた人
喜多村道秋

新卒で大手インフラ企業に入社。約12年間、工場の設備保守や運用計画の策定に従事。 ライター業ではインフラ構築やセキュリティ、Webシステムなどのジャンルを作成。「圧倒的な初心者目線」を信条に執筆しています。

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