クラウド移行を進めるにあたって「どのような言語スキルをもつクラウドエンジニアを採用すればよいのか」と悩みを抱える企業担当者も多いのではないでしょうか。
オンプレミス環境とは異なるスキルセットが求められるクラウド構築では、PythonやGoといったプログラミング言語だけでなく、IaCで用いる新しい言語も登場しています。言語スキルのミスマッチは、採用コストの増大やプロジェクトの遅延に直結しかねない重要な問題です。
そこで本記事では、クラウドエンジニアに必要な言語スキルを活用シーンとともに解説します。自社の目的にあった言語スキルを判断しながら、クラウドエンジニアの採用に役立ててみてください。
【活用例】クラウドエンジニアに言語スキルは必要
企業のクラウド移行に携わるクラウドエンジニアには、特定の言語スキルが求められる場面も増えています。クラウド環境の構築や運用を効率的かつ安定的に行うためには、手作業ではなくコードで自動化する手法が主流になりつつあるためです。
とくにインフラ構成のコード化(IaC)や運用の自動化・効率化には、言語スキルが生かされる場面も少なくありません。そこで、それぞれの活用例をもとに、クラウドエンジニアに言語スキルが必要な理由を解説します。
関連記事:クラウドエンジニアのスキルセットとは?採用・育成に役立つ観点を解説
インフラ構成のコード化(IaC)
クラウドエンジニアが言語スキルを求められる例として、インフラ構成のコード化(IaC)が代表的です。IaC(Infrastructure as Code)は、インフラ構成をプログラムのコードのようにテキストファイルで管理する手法を指します。
IaCを取り入れることで、手作業で対応していたインフラ構築の自動化が可能です。構成をコードで定義するため、以下のようなメリットが得られます。
- 手作業によるミスを削減できる
- 誰でも同じ構成の環境を再現できる
- 設定変更の履歴や差分を容易に管理できる
IaCを実現するための主要なツールとして「Terraform」や「AWS CloudFormation」が挙げられます。これらのツールを活用するには、以下のようにそれぞれ指定された言語の知識が必要です。
| ツール | 言語スキル |
|---|---|
| Terraform | HCL(データ言語) |
| AWS CloudFormation | JSON/YAML(データ言語) |
運用の自動化・効率化
クラウド環境は構築して終わりではなく、その後の安定した運用が事業の継続性に直結します。そのため、クラウドエンジニアの業務では、日々の運用を自動化・効率化で改善する視点も重要です。
たとえば、以下のような定型的な作業には、スクリプトを用いた自動化処理を作成するのが一般的です。
- 業務時間外にシステムを自動的に停止・起動する
- 深夜にサーバーデータを自動バックアップする
- 出力されたエラーログを管理者に通知する
こうした自動化処理の作成には「スクリプト言語」と呼ばれる言語を用いるのが一般的です。たとえば、主要なクラウドサービスでは、ブラウザ上でコマンド実行できるツール「Cloud Shell」を活用するときにスクリプト言語「Bash」の知識が役に立ちます。
クラウドエンジニアが扱う主要プログラミング言語
クラウドエンジニアの採用を考えるときには、どのプログラミング言語を要件に含めるべきかの判断に迷う場合もあります。運用の自動化や効率化には、サービスによって異なる言語知識が求められるからです。
そこで、クラウドエンジニアが業務で扱う主要なプログラミング言語について、それぞれの特徴を解説します。
- Python
- Go(Golang)
- Ruby
- JavaScript
なお、クラウドエンジニアが扱う言語には、インフラ構成を記述する「データ言語」や定型作業を自動化する「スクリプト言語」の知識も欠かせません。これらの言語については、後続の見出しで詳しく説明します。
Python
シンプルな文法に定評があるPythonは、クラウドエンジニアの業務で幅広く活用されている言語です。インフラ構築からデータ分析、AI開発まで対応できる汎用性の高さに強みがあり、豊富なライブラリやフレームワークも用意されています。
クラウドの分野では、各クラウドサービスが提供しているSDK(ソフトウェア開発キット)を利用した自動化処理の作成に便利です。たとえば、AWSであればPython向けのSDK「boto3」があり、サーバーの起動やストレージの設定変更などのスクリプト処理を作成できます。
Go(Golang)
Go(Golang)は、Google社が開発したプログラミング言語です。プログラムの実行速度に優れた特徴があり、とくにサーバーサイドで処理を同時実行する「並列処理」に活用されています。
また、プログラムのファイルサイズが小さく、動作が軽快なため、マイクロサービスやコンテナ技術との相性のよさも魅力的です。マイクロサービスとは、一つの大きな機械ではなく、たくさんの小さな部品を組み合わせて動く仕組み(概念)を指します。
コンテナ技術の代表格である「Docker」や「Kubernetes」は、Goを用いて開発されたツールです。自社でマイクロサービスアーキテクチャの導入やコンテナ化を推進したい場合には、Goの言語スキルが役に立ちます。
Ruby
Rubyは、日本で開発されたオブジェクト指向のプログラミング言語です。Pythonと同様に直感的で書きやすい文法に定評があり、そのシンプルな使い勝手のよさが人気を集めています。
一般的にはWebアプリ開発に用いられる言語ですが、クラウド運用の構成管理ツール(ChefやPuppetなど)で使用されるケースも少なくありません。とくにレシピやマニフェストと呼ばれる設定ファイルを記述したり、機能を拡張したりするときにRubyの知識が役に立ちます。
また、Web開発で用いられるフレームワーク「Ruby on Rails」と連携すれば、インフラ管理の言語もRubyに統一可能です。開発チームと共通の言語を活用すれば、チーム間の連携強化につながります。
JavaScript
JavaScriptは、以下のようなWebのフロントエンド開発に用いられる言語です。
- Webサイト上で動くアニメーション
- 入力フォームの制御・チェック処理
- サーバーとの非同期通信
他言語に比べて、クラウドエンジニアが使用する頻度は低い言語です。しかし、サーバーサイドの実行環境である「Node.js」をクラウドで活用するケースがあり、とくにサーバーレス環境でJavaScriptの知識が生かされます。
サーバーレスとは、自社でサーバーの存在を意識せずにプログラムを実行できる仕組みです。クラウドでは、AWS LambdaやAzure Functionsなどを用いてサーバーレス環境を構築します。
以下は、サーバーレス環境で実行される処理の一例です。
- 外部サービスとのAPI連携
- リアルタイムでのデータ処理
- システム異常を知らせるアラート通知
クラウド構築の運用改善に役立つその他の言語
クラウドエンジニアに求められる言語スキルは、システムやアプリを構築するプログラミング言語だけではありません。クラウド環境の構築や運用では、繰り返し発生する手作業を効率化する以下の言語も役に立ちます。
- スクリプト言語(定型作業の自動化に役立つ)
- データ言語(インフラ構成のコード管理に役立つ)
ここからは、それぞれの言語について、特徴や活用例を解説します。
運用効率化に便利なスクリプト言語
クラウドの運用業務を効率化するうえで、スクリプト言語の知識があると便利です。比較的シンプルな文法で記述でき、決まった手順で行う操作の自動化(スクリプト化)に活用されています。
クラウドの運用効率化に用いられるスクリプト言語は、主に以下の2種類です。
- Linux環境で用いられる「Bash」
- Windows環境で用いられる「PowerShell」
自社のシステム環境にあわせて、必要な言語スキルを検討してみましょう。
Bash(シェルスクリプト)
Bashは、LinuxやCentOSなどのUNIX系OSで標準的に利用されるスクリプト言語です。OSを操作するための「シェル」の一種であり、Bashを用いて作成されたスクリプトは一般的に「シェルスクリプト」と呼ばれます。
Bashを用いたシェルスクリプトは、コマンドによる作業の自動化や簡易的なデータ処理に活用するケースが多く、たとえば次のような処理を自動化できます。
- クラウドリソースの定期チェック
- 業務時間外のシステム起動・停止
- ログ取得やアラート通知
ブラウザ上でコマンド実行できるツール「Cloud Shell」を活用するときにも、Bashの知識が役に立ちます。日々の運用業務を効率化できるだけでなく、OSレベルでのトラブルシューティングにも効果的です。
PowerShell
PowerShellは、Microsoft社が開発したWindows環境向けのスクリプト言語です。とくにMicrosoft Azureの関連サービスと相性がよく、スクリプト処理を効果的に活用できます。
たとえば、以下はPowerShellで自動化できる処理の一例です。
- リソース使用状況のチェック
- ログ取得やアラート通知
- 仮想マシンの停止・起動
また、以下のようなMicrosoft社の製品に活用できる利便性もPowerShellの強みです。
- Windows Server
- Active Directory
- Exchange Server
Windowsのオンプレミス環境をクラウド移行するときには、PowerShellの扱いに慣れたクラウドエンジニアが重宝されます。
IaCで活用するデータ言語
インフラ構成をコード化するIaCでは、構成や設定内容の記述にデータ言語が用いられています。プログラミング言語やスクリプト言語とは異なり、処理の実行文ではなく構成の定義を記述するのが特徴的です。
クラウド運用では、主に以下のデータ言語が用いられています。
- YAML/JSON
- HCL(主にTerraformで活用)
自社で活用するツールにあわせて、必要な言語スキルを検討してみましょう。
YAML/JSON
YAMLとJSONは、データの構造を記述するための汎用的なフォーマットです。いずれも宣言的な記述形式として、設定ファイルや構成コードなどに広く用いられています。
| データ言語 | 主な特徴 |
|---|---|
| YAML (YAML Ain’t Markup Language) |
|
| JSON (JavaScript Object Notation) |
|
たとえば、AWS CloudFormationでは、インフラの構成をYAMLまたはJSONで記述します。また、代表的なコンテナオーケストレーションツール(複数のコンテナを自動的に管理・運用するためのツール)のKubernetesでは、コンテナ構成を定義するファイル(マニフェスト)にYAMLが採用されています。
各種ツールを扱うクラウドエンジニアには、それぞれに採用されるデータ言語の知識が必要です。
HCL
HCLは、IaCを実現する代表的なツール「Terraform」で用いられているデータ言語です。HCLは「HashiCorp Configuration Language」の略であり、Terraformを開発したHashiCorp社の製品に特化しています。
Terraformを活用するメリットは、特定のクラウドサービスに依存しない「マルチクラウド」に対応していることです。異なるクラウドサービスを共通の言語とツールで管理できるため、複数のプラットフォームを利用する企業にも重宝します。
また、IaCの導入により、仮想マシンやストレージなどのリソースをコードとして定義可能です。HCLで書かれたファイルを読み込むことで、バージョン管理や同一環境の再現・構築の自動化を実現できます。
クラウドエンジニアの言語スキルを確認するポイント
クラウドエンジニアの採用において、候補者の言語スキルの確認は重要なプロセスです。しかし、特定の言語が使えるといった表面的な情報だけでは、自社の課題を解決できる人材かどうかを判断できません。
そこで、クラウドエンジニアがもつ言語スキルを把握するため、確認しておきたいポイントを以下の段階に分けて解説します。
- 募集
- 書類選考
- 面談
クラウド環境の構築や運用で「どのように言語スキルを生かせるか」という実務能力に着目してチェックしてみましょう。
募集要項に必要言語を明記する
募集要項に具体的な業務内容や求める言語名を記載すると、スキルのミスマッチを防ぐ効果が期待できます。採用側の意図が候補者に正しく伝わらない募集要項は、条件にあわない応募が増える要因の一つです。
たとえば、以下の募集要項は、クロスネットワークで募集しているプロジェクトの一例です。
大手エンタメ企業のオンラインプラットフォームジニアリングに取り組むことができます。
- k8sの運用
- CDパイプラインの運用
- Terraformによるリソース管理
- エコシステム導入(Istioのようなk8sのエコシステムが中心です)
【開発環境】
言語:Go
インフラ環境:GCP, AWS
CI:Github Actions
Monitoring:Datadog, PagerDuty
【担当工程】
案件定義/基本設計/詳細設計/開発/結合T/ユーザーT/保守改修/研究開発/基盤設計
障害対応(オンコール対応)
#クライアントワーク #フルリモート #リモートワーク #週4日〜5日稼働
(引用:クロスネットワーク)
また、選考にかかる工数を減らすためには、言語スキルを生かして「どのような課題を解決してほしいか」という背景を記載するのも効果的です。候補者自身も実際の業務で「どのように貢献できるか」を具体的にイメージできます。
具体的なスキルレベルをチェックする
書類選考では、候補者の職務経歴書やスキルシートから具体的なスキルレベルをチェックします。注目すべきポイントは「どのようなプロジェクトで、どのように言語スキルを活用したか」という経験です。
- PythonでAWS Lambdaの関数を作成した経験がある
- AWS SDKを用いた自動化した経験がある
また、言語を用いた経験が「どのような成果につながったのか」の実績があると、さらにスキルレベルの信頼性が高まります。たとえば、Pythonを用いたスクリプト処理であれば、以下のような実績です。
- AWSのモニタリング自動化により月次作業の工数を50%削減
- アラート発生後のサービス停止時間を10%削減
候補者の具体的な経験や実績は、スキルレベルの客観的なチェックに役立ちます。
面談時により詳細な実務経験を質問する
職務経歴書やスキルシートの内容を深掘りするため、面談時にはより詳細な実務経験を質問しましょう。たとえば、以下のように、実際に担当してほしい業務にかかわるような質問が効果的です。
- 〇〇言語を用いて、運用改善につながるスクリプトを作成した経験はありますか?
- もし〇〇の課題解決を依頼する場合、言語知識を用いてどのように対応しますか?
質問による対話を通じて、候補者の言語スキルをより具体的に確認できます。具体的な手順や考えを論理的に説明できるかどうか、候補者の実務経験を深掘りしてみましょう。
言語スキルがあるクラウドエンジニアの採用方法
自社の求める言語スキルがあるクラウドエンジニアを確保する方法には、以下の2パターンが挙げられます。
- 正社員の中途採用
- フリーランスの活用
それぞれの方法には異なる特徴があるため、自社の状況やプロジェクトの期間にあわせて最適な方法を検討してみましょう。

正社員の中途採用
言語スキルのあるクラウドエンジニアの採用方法として、正社員の中途採用は有効な手段です。とくに正社員の採用は、社内の長期的な組織形成やナレッジ蓄積を期待できます。
ただし、正社員の採用活動には、少なからず時間とコストがかかる点も考慮も必要です。とくに言語スキルに秀でたクラウドエンジニアの需要が高いため、他社との競争も激しくなる傾向にあります。
また、採用後には給与に加えて、社会保険料や労働保険料などの固定費も必要です。一時的な人材確保を重視する場合は、外部委託(フリーランス)の活用も検討してみましょう。
関連記事:【企業向け】クラウドエンジニアの単価相場|採用コスト最適化のコツも解説
フリーランスの活用
一定期間またはプロジェクト単位で人材確保が必要な場合は、フリーランスの活用が効果的です。とくにクラウド移行の初期フェーズや運用自動化の仕組みを構築する場面など、特定の言語スキルが求められる課題解決に向いています。
外部委託にはSESやエンジニア派遣といった選択肢もありますが、以下のような観点を重視する場合にはフリーランスの活用が効果的です。
- 条件やスキルにマッチする特化型の人材を確保したい
- 最新の知見や技術を導入したい
- 採用・教育にかかるコストを最小限に抑えたい
フリーランスのエンジニアは、特定の技術領域に特化した専門性のある人材も少なくありません。スキルの価値を高めるために技術を学び続けている傾向があるため、最新の知見や他社での成功事例を自社に導入しやすいメリットもあります。
また、プロジェクトの進捗にあわせて、契約期間を柔軟に調整可能です。採用・教育にかかるコストだけでなく、契約期間に応じて人件費も最小限に抑えられます。
関連記事:フリーランスのクラウドエンジニアを採用するメリットと方法を徹底解説
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クラウド環境の構築や運用の改善は、クラウドエンジニアの重要な役割です。そして、その役割を果たすためには、インフラ環境や目的に応じたさまざまな言語スキルが役立ちます。
クラウドエンジニアに求める言語スキルを把握するには、業務やシチュエーションによって「どの言語が必要なのか」を事前に整理しておく必要があります。言語スキルの理解は、社内エンジニアの育成だけでなく採用時の観点としても重要です。
もし、ツールやスクリプトにかかわる言語スキルが豊富なクラウドエンジニアを確保するなら、フリーランス専門のエージェントサービス「クロスネットワーク」にご相談ください。
フリーランス専門のエージェントサービス「クロスネットワーク」では、インフラ領域に精通したフリーランスエンジニアを迅速にマッチングいたします。クラウド環境に対応できる人材が多数在籍しており、言語スキルを活かした自動化・運用改善の支援に幅広く対応します。プロジェクト単位での依頼にも柔軟に対応しており、初めての業務委託を検討する企業でも安心です。
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元エンジニアのWebライター。自動車部品工場のインフラエンジニアとして、サーバー・ネットワークの企画設計から運用・保守まで経験。自分が構築したインフラで数千人規模の工場が稼働している達成感とプレッシャーは今でも忘れられない。
