
インフラ構築を外部委託しようと検討している企業の担当者は「SIerに任せるべきか、インフラエンジニアを確保すべきか」と判断に悩むケースも少なくありません。両者の違いを把握していないことで、プロジェクトのコストや進行・管理に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
業務委託のリスクを最小限に抑えるためには、インフラエンジニアとSIerの違いを理解し、自社の状況に適した選択が必要です。そこで今回は、インフラエンジニアとSIerの違いを図解と比較でわかりやすく解説します。
それぞれの違いからわかる判断軸をお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
【結論】インフラエンジニアは職種・SIerは企業
結論からいうと、インフラエンジニアとSIerには以下の違いがあります。
- インフラエンジニアは技術者の「職種」
- SIerはシステム開発・インフラ構築を請け負う「企業」
別カテゴリの言葉であるにもかかわらず混同されやすい理由には、上図のようにインフラエンジニアがSIerに所属している背景があります。外部委託の検討時に同じ文脈で混在してしまうことが「違いがわかりにくい」と感じる要因です。
インフラエンジニアはITインフラ構築を担う技術職
インフラエンジニアとは、ITインフラの構築〜運用・保守を担当する技術職です。サーバーやネットワークを構築しながら、ITインフラが稼働する基盤づくりを担当します。
また、システムの稼働監視や障害発生時の復旧作業も、インフラエンジニアが担当する業務です。近年では物理的なサーバー機器を保有せず、クラウドサービスを利用してインフラ基盤を構築するケースも増えています。
関連記事:インフラエンジニアの職種内容を徹底解説!人材採用のポイントも紹介
SIerはシステム開発やインフラ構築を請け負う企業
SIer(システムインテグレーター)は、プロジェクトの企画から運用・保守まで一貫して請け負う企業です。ヒアリングしたクライアントの要望を実現するため、インフラ構築からシステム開発まで総合的に取り組みます。
つまり、個別の技術を提供するだけでなく、プロジェクト全体を管理しながら完成まで導くのがSIerの役割です。ときには大規模なプロジェクトを遂行するため、SIerには以下のようにさまざまな職種の専門家が所属しています。
- プロジェクトマネージャー
- インフラエンジニア
- システムエンジニア
- プログラマー
大規模で複雑なプロジェクトを立ち上げるときには、全体の管理を一任できるSIerが頼りになります。
関連記事:SIerの仕事内容を解説|実はフリーランスで解決できるケースも?
5つの項目でわかるインフラエンジニアとSIerの違い
インフラ構築のリソースを確保する方法として、主に以下の選択肢が挙げられます。
- インフラエンジニアの正社員採用
- フリーランスエンジニアへの業務委託
- SIer企業のエンジニア
それぞれに異なる特徴があり、最適な選択肢はプロジェクトの目的や予算に応じて判断するのが効果的です。そこで、自社に適した選択肢を判断するため、以下5つの観点で比較してみましょう。
- 採用・依頼にかかる月額コスト
- リソース確保のスピード感
- 業務経験・スキルの専門性
- プロジェクトの指揮命令権
- ノウハウを社内に蓄積する難易度
以降の見出しでは、それぞれの観点における判断基準を具体的に解説します。
採用・依頼にかかる月額コスト
インフラエンジニア(正社員) | 単価相場:31万円〜62万円/月 (平均年収:373万〜747万円) |
インフラエンジニア(フリーランス) | 単価相場:30万~150万円/月 ※スキル・業務内容によって異なる |
SIer企業のエンジニア(一人当たりの人件費) | 単価相場:100万円~200万円/月 ※マイナビDXサポーターズのデータを参照 |
上表では、インフラエンジニアの単価相場を示しています。注目したいポイントは、SIerに依頼する場合の単価相場です。
SIerに依頼する場合は、担当するインフラエンジニアの人件費とは別に、マージン(企業の利益や管理費)の支払いも必要です。プロジェクト管理を含めた包括的なサービスを受けられる反面、費用が高くなりやすい傾向にあります。
一方で正社員のインフラエンジニアを採用する場合は、比較的低い単価相場です。ただし、毎月の給与に加えて社会保険料や福利厚生費などの固定費が発生するため、一般的には給与額以上の費用が必要となります。
フリーランスのインフラエンジニアに依頼する場合は、契約時に定めた月額単価を支払うのが基本です。一見すると月額単価は高く見えますが、中間マージンや固定費が発生しないため、トータルコストを低く抑えられるケースも少なくありません。
ただし、フリーランスエージェントを活用する場合には、マージンが発生します。SIerと比較しても高額ではないため、コスト面を重視したい企業はフリーランスの活用を検討してみましょう。

リソース確保のスピード感
インフラエンジニア(正社員) | 数か月〜半年 |
インフラエンジニア(フリーランス) | 数日~数週間 |
SIer企業のエンジニア | 数週間~数か月 |
上表に示すとおり、選択肢によってリソース確保のスピード感は異なります。とくに正社員のインフラエンジニアを採用する場合は、応募者の選考から内定後のオンボーディングまで数か月〜半年程度の期間を要するケースも少なくありません。
また、SIerに外部委託する場合は、契約交渉や人員の調整などに数週間ほどの時間が必要です。とくに大規模かつ複雑なプロジェクトでは、人員確保の調整期間が数か月におよぶケースも想定されます。
フリーランスのインフラエンジニアは、比較的スムーズにリソースを確保しやすい選択肢です。企業とエンジニアが合意次第、迅速にプロジェクトへの参画が可能です。
さらに、エージェントサービスを活用すれば、自社の要件にあった人材を効率的に探せます。たとえば、フリーランス専門のエージェントサービス「クロスネットワーク」では、最短3営業日でのアサインも可能です。

業務経験・スキルの専門性
インフラエンジニア(正社員) |
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インフラエンジニア(フリーランス) |
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SIer企業のエンジニア |
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インフラエンジニアの業務経験やスキルの専門性は、プロジェクトの進行や品質にかかわる重要な要素です。とくに即戦力を求める場合は、採用段階での見極めが欠かせません。
正社員を採用する場合は、基本的には育成のための研修費用や時間といった教育コストがかかります。また、技術のアップデートが速いIT分野では、継続的なスキルアップを促す仕組みも必要です。
フリーランスのインフラエンジニアには、特定の技術分野や最新トレンドに特化したスキルをもつエンジニアも少なくありません。エージェントを活用すれば、専門分野や最新技術に対応できる人材とのマッチングサポートも受けられます。
一方で企業としてプロジェクトを手がけているSIerは、組織としての総合力や安定した品質が強みです。組織で対応するため個々のエンジニアのスキルが見えにくい場合もありますが、幅広い業界の知見や優れた対応力が期待できます。
関連記事:【一覧表】インフラエンジニアに求めるスキル15選!資格も紹介
プロジェクトの指揮命令権
インフラエンジニア(正社員) | エンジニアへの指揮命令権あり ※プロジェクトを「自社」が主体で進行 |
インフラエンジニア(フリーランス) | エンジニアへの指揮命令権なし ※契約に基づき「エンジニア」が主体で進行 |
SIer企業のエンジニア | エンジニアへの指揮命令権なし ※プロジェクトを「SIer企業」が主体で進行 |
自社で社員を採用するか、外部に委託するかによって、エンジニアへの指揮命令権が異なります。
正社員のインフラエンジニアを採用した場合は、指揮命令権は自社にあります。そのため、業務の進捗管理やトラブル対応など、プロジェクトの主体的なコントロールが可能です。
一方で「業務委託」が基本となるフリーランスの場合は、発注側に指揮命令権がありません。作業を進める方法や時間・場所などは、エンジニアの裁量に委ねられます。ただし、業務の目的を伝えたり、進捗状況の報告を求めたりするような指示は問題ありません。
フリーランスと同様に業務委託が基本となるSIerの場合も、発注側に指揮命令権がありません。とくに大規模案件では「請負契約」が一般的なため、SIer企業が主体でプロジェクトを進行します。SIerの所属エンジニアに直接指示を出すと偽装請負と見なされるリスクがあるため注意しましょう。

ノウハウを社内に蓄積(内製化)する難易度
インフラエンジニア(正社員) | 内製化しやすい |
インフラエンジニア(フリーランス) | 内製化しにくい(工夫が必要) |
SIer企業のエンジニア | 内製化しにくい(工夫が必要) |
プロジェクトをとおして得られた技術的な知見や運用ノウハウを、将来的に「自社の資産として蓄積できるかどうか」も考慮しておきたい観点です。たとえば、正社員のインフラエンジニアを採用すれば、日々の業務で得た知識や経験を社内に蓄積できます。
一方でSIerやフリーランスに外部委託する場合は、ノウハウの蓄積が難しくなるケースも少なくありません。とくにSIerはプロジェクト全体を一任できる反面、主体的に情報共有やドキュメント整備に取り組まないと自社がシステムの仕様を十分に把握できない状況に陥ります。
フリーランスに依頼する場合も、契約期間が終了すればプロジェクトを離れるエンジニアとともに技術的な知見も失われがちです。依頼内容にドキュメント作成や情報共有を含めながら、意図的にノウハウを社内に残す工夫も心がけましょう。
インフラエンジニアの委託先を選ぶ判断基準
SIerはインフラエンジニアが所属する組織の1つであり、それぞれに「企業」と「職種」の明確な違いがあります。そして、インフラ構築のリソースを確保する方法としては、SIerを含めた以下の候補が挙げられます。
リソースを確保する方法 | 主な選択肢 |
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社内のリソースを増員する場合 |
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社外のリソースを活用する場合 |
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社内のリソースを増員する方法としては、正社員採用の選択肢が挙げられます。しかし、リソース確保までの時間や採用・教育コストがかかるなど、正社員採用にはデメリットの考慮が必要です。
また、社外のリソース活用を検討する場合は、SESやエンジニア派遣といった選択肢もあります。今回は主要な選択肢であるSIerとフリーランスのインフラエンジニア、そして比較対象として正社員採用の3つの観点に絞って委託先の判断基準を解説します。
インフラエンジニアのSES採用や派遣会社の活用については、詳しく解説している関連記事を参考にしてみてください。
関連記事:インフラエンジニアのSES採用とは?フリーランスとの比較も解説
関連記事:インフラエンジニアを派遣会社で採用するメリット|他の契約との違いも解説
コストを重視するならインフラエンジニア(フリーランス)がおすすめ
インフラエンジニアを確保する方法として、まずは正社員採用が挙げられます。正社員を採用すれば自社主体でプロジェクトを進めやすく、技術的なノウハウを社内に蓄積しやすいメリットがあります。
ただし、正社員の採用プロセスには、数か月〜半年ほど長期的なプランが必須です。また、採用活動だけでなく、採用後も給与に加えて社会保険料や福利厚生費などの継続的な費用が発生します。
関連記事:インフラエンジニアの採用が難しい理由と優秀な人材を獲得する方法を解説
正社員採用の難しさを考慮すると、フリーランスのインフラエンジニア活用は効果的な選択肢です。SIerのにおけるマージンや正社員採用における継続的な費用を抑えられるだけでなく、フリーランスの活用には以下のようなメリットもあります。
- コストを抑えながら即戦力を確保できる
- リソース確保までのスピードが早い
- 自社主導でプロジェクトを進めやすい
コストを抑えながら即戦力を確保できる
フリーランスのインフラエンジニアには、以下のようにコストを抑えやすいメリットがあります。
- SIerのようにマージンがかからない
- 正社員採用のように社会保険料や福利厚生費がかからない
また、専門スキルに特化したエンジニアとプロジェクト単位で契約できるため、契約期間に応じた最小限のコストで予算計画を立てられます。
ただし、フリーランスエージェントを活用する場合には、SIerの外部委託と同様にマージンが発生します。しかし、一般的にはSIerほど高額ではないため、コスト以外のメリットも含めてフリーランスの活用は効果的な判断です。
リソース確保までのスピードが早い
リソース確保までのスピードの早さも、フリーランスのインフラエンジニアを活用するメリットです。
正社員を採用する場合は、求人掲載や選考活動、さらには入社手続きなど、業務を開始するまでに数か月単位の時間がかかります。採用後には、業務や社内ルールの教育期間も必要です。
一方でフリーランスであれば、リソース確保まで数日~数週間ほどで完結するケースも少なくありません。さらに、フリーランス専門のエージェントサービスを活用すれば、自社の要件にマッチする人材をスムーズに見つけられます。
たとえば、フリーランス専門のエージェントサービス「クロスネットワークス」では、最短2〜3日でインフラエンジニアのリソース確保が可能です。急な欠員補充や緊急性の高いプロジェクトなど、スピードが求められる場面で効果的なサポートを提供しています。

自社主導でプロジェクトを進めやすい
SIerの主な契約形態は、プロジェクト全体を一貫して請け負う「請負契約」が一般的です。全体の管理まで一任できる利便性がある反面、プロジェクトの進行がSIer主導になりやすいリスクもあります。
一方でフリーランスのインフラエンジニアを活用すれば、自社の一員としてコミュニケーションをとりながらプロジェクトの進行が可能です。ドキュメントの作成やノウハウの共有といった社内ルールを適用しやすく、プロジェクトで得られた知見を社内に蓄積しやすいメリットがあります。
また、仕様変更や方針転換にも柔軟に対応しやすいため、開発手法として「アジャイル開発」を取り入れたい企業にもおすすめです。一般的なSIerが採用する「ウォーターフォール開発」とは異なり、実装と検証を繰り返しながら機能単位の柔軟な開発を進められます。
プロジェクト全体を一任したいならSIerがおすすめ
自社のリソースを使わずにプロジェクト全体を外部に一任したい場合は、SIerへの依頼が適しています。SIerには要件定義から運用・保守まで一貫して請け負う体制が整っており、以下のようなメリットを期待できます。
- 要件定義〜運用・保守まで一括で依頼できる
- プロジェクト管理も依頼できる
- 一定水準の品質・安定性を期待できる
とくに中規模から大規模なプロジェクトでは、プロジェクトマネージャーやシステムエンジニアなども含めた組織体制が必要です。複数人のインフラエンジニアを確保したいケースもあるため、SIerに依頼すれば体制構築の手間を軽減できます。
要件定義〜運用・保守まで一括で依頼できる
SIerに依頼するメリットは、プロジェクトの以下の工程を一任できることです。
- 要件定義
- 設計
- 開発・構築
- テスト
- 運用・保守
SIerには各工程に対応できる組織力があるため、自社に開発体制が整っていなくてもプロジェクトを円滑に進められます。とくにインフラ構築とシステム開発が連携する大規模プロジェクトでは、開発体制に優れたSIerのサポートが欠かせません。
プロジェクト管理も依頼できる
SIerに依頼すれば、プロジェクト管理も含めたインフラ構築・システム開発を一任できます。システム開発やインフラ構築を成功させるためには、以下のようなマネジメント業務が欠かせません。
- スケジュール管理
- 課題管理
- 品質管理
自社にプロジェクトマネージャーの経験者が不足しているときには、管理業務が負担となるケースも少なくありません。全体の進行管理を担うSIerに依頼すれば、自社担当者にかかる負担を軽減できます。
大規模案件では請負契約が基本となるSIerは、進行中の進捗報告はもちろん、予期せぬトラブルや不具合対応も担当します。自社の担当者は管理業務の負担を軽減できるので、本来注力したい業務にリソース配分が可能です。
一定水準の品質・安定性を期待できる
豊富な実績があるSIerに依頼したほうがよい理由は、一定水準の品質やシステムの安定性を期待できるからです。さまざまな業界や規模のプロジェクトを手がけたSIerであれば、その過程で培われたノウハウや標準化されたプロセスを保有しています。
個人ではなく企業としてプロジェクトに取り組むSIerは、属人的なスキルに頼ることなく安定した品質のインフラ構築が可能です。とくに自社と同じ業種や類似のプロジェクト経験が豊富なSIerを選定すれば、業務の進行・管理を安心して任せられます。
停止が許されないミッションクリティカルなインフラ構築を検討している企業にとって、SIerがもつ組織としての信頼性や品質体制は魅力的な強みです。また、業界特有の要件や課題を深く理解しているため、より的確な提案やスムーズなプロジェクト進行も期待できます。
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混在されがちなインフラエンジニアとSIerには「職種」と「企業」といった明確な違いがあります。
- インフラエンジニアはITインフラ構築を担う「技術職」
- SIerはシステム開発やインフラ構築を一貫して請け負う「企業」
自社のプロジェクトを依頼するなら、それぞれの違いを理解したうえで目的や課題にあった委託先を選定するのが理想的です。とくに大規模なプロジェクトを一任したい場合は、SIerへの委託が適しています。
しかし、小規模なプロジェクト計画やコストを抑えた体制構築を検討する場合は、柔軟に依頼しやすいフリーランスエンジニアの活用が効果的です。
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元エンジニアのWebライター。自動車部品工場のインフラエンジニアとして、サーバー・ネットワークの企画設計から運用・保守まで経験。自分が構築したインフラで数千人規模の工場が稼働している達成感とプレッシャーは今でも忘れられない。