外部リソースの活用を検討するなかで「準委任契約」や「SES」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。請負契約や派遣契約との違いを把握しないままでは、思わぬ法的トラブルに巻き込まれたり、期待どおりの成果が得られなかったりするリスクがあります。
とくにIT業界では「SES契約」と「準委任契約」が混同されやすく、指揮命令権や完成責任といった観点があいまいになってしまうケースも少なくありません。そこで本記事では、SESにおける準委任契約の定義やその他の契約形態との違いを解説します。偽装請負を防ぐためのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
SESにおける準委任契約とは
SES(システムインテグレーター)は、エンジニアの技術力を顧客企業へ提供するサービスです。一般的にシステム開発やインフラ構築の現場で広く利用されています。
「SES契約」という名称の契約形態は法律上に存在しません。実務においてSESを利用する場合は、民法上の「準委任契約」を結ぶケースが一般的です。
準委任契約の定義
SESにおける準委任契約とは、特定業務を外部に委託する契約形態です。システム開発やインフラ構築などの業務をエンジニアへ依頼するときに用いられています。
準委任契約と請負契約は、以下のように目的が異なります。
- 準委任契約は「業務の遂行」が目的
- 請負契約は「成果物の完成」が目的
準委任契約を結んだエンジニアには、プロとして通常期待される注意を払う義務「善管注意義務」が発生します。たとえば、インフラ運用であれば、サービスが安定かつ継続的に稼働するように業務を遂行する義務です。
履行割合型と成果完成型
準委任契約は、履行割合型と成果完成型の2種類に分けられます。
| 履行割合型 |
|
| 成果完成型 |
|
SESの準委任契約では、一般的に履行割合型が採用されます。エンジニアが稼働した時間や期間に対して対価を支払う契約形態です。
(参考:民法第648条第2項・第624条第2項)
成果完成型は、2020年4月1日の民法改正により追加された契約形態です。請負契約と比べて、成果物が完成しなかった場合の責任範囲が異なります。
(参考:民法第648条の2)
準委任契約と請負契約・派遣契約の違い
| 主な違い | 準委任契約 | 請負契約 | 派遣契約 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 履行割合型:業務の遂行 成果完成型:成果物の完成 | 成果物の完成 | 労働力の確保 |
| 発注側の指揮命令権 (労務管理) | なし | なし | あり |
| 成果物の完成責任 | 原則としてなし | あり | なし |
| 契約不適合責任 (旧:瑕疵担保責任) | 原則としてなし | あり | なし |
エンジニアを確保する契約形態は、上記のように3種類に分けられます。それぞれの契約形態は、報酬の発生条件や責任の範囲などによって区分が明確です。
SESを活用する場合は「準委任契約」を結ぶケースが一般的ですが、要件次第では請負契約や派遣契約のほうが適している場合もあります。自社に適した選択肢を判断するため、それぞれの違いを把握しておきましょう。

請負契約との違い
請負契約との主な相違点は、完成責任と契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の有無です。請負契約では、以下の対応が義務付けられています。
- 成果物の納品
- 契約不適合があった場合の対応(不具合やバグの修正対応)
SESの業務委託では、準委任契約(履行割合型)を結ぶのが一般的です。エンジニアは専門技術を提供して業務に取り組みますが、成果物の完成責任は負いません。
また、準委任契約と請負契約のどちらも、発注側の企業に指揮命令権がありません。エンジニアに対する直接的な作業指示や勤怠管理は、偽装請負とされる可能性もあるため注意が必要です。
派遣契約との違い
派遣契約との主な相違点は、エンジニアに対する指揮命令権の所在です。派遣契約では、エンジニアを受け入れる派遣先企業(発注側)に指揮命令権があります。自社の正社員と同じように、日々の業務内容や勤務時間の管理が可能です。
一方でSES(準委任契約)では、発注側に指揮命令権がありません。あくまでも業務を外部委託する形式であるため、エンジニアへの指示はSESの責任者をとおす必要があります。
また、どちらも業務時間に対して報酬を支払う契約形態です。ただし、以下のように契約の目的が異なります。
- 準委任契約は「業務の遂行」が目的
- 派遣契約は「労働力の確保」が目的
関連記事:SESの指示系統が複雑化する理由|運用スピードを落とさない解決策
SESで準委任契約を結ぶメリット
ここからは、SESで準委任契約を結ぶメリットを以下の観点で解説します。
- 人材確保のスピード
- リソース調整の柔軟性
- 採用や教育にかかるコスト削減
自社が選択すべき契約形態を把握するためにも、準委任契約ならではのメリットを理解しておきましょう。
即戦力人材を迅速に確保できる
SESで準委任契約を結ぶことで、すでに実務経験を積んだエンジニアを迅速に確保できます。エンジニアの機会損失を防ぐためにも、人材確保のスピードは重要な観点です。
正社員として優秀なエンジニアを採用するには、求人掲載から内定までに数か月かかるケースも少なくありません。とくにインフラ構築のように専門性が求められる業務では、即戦力の人材を確保できるSESの活用が効果的です。
関連記事:インフラエンジニアの採用が難しい理由と優秀な人材を獲得する方法を解説
人的リソースを柔軟に調整できる
準委任契約には、プロジェクトの規模や進捗状況に応じて人員を柔軟に調整できるメリットもあります。繁忙期や閑散期にあわせて、月単位で人員の追加・削減が可能です。
また、業務の優先順位が変わった場合にも柔軟に対応できます。請負契約では仕様どおりの成果物を完成させる義務があるため、仕様変更には契約の見直しや追加費用の交渉が必要です。
業務の遂行が目的となる準委任契約は、プロジェクトの状況に応じてSES企業と相談しながら見直しを図れます。契約期間にあわせて契約更新するかどうかを判断できるため、必要最小限のリソースを確保できる経営上のメリットも魅力です。
採用や教育のコストを削減できる
SESの準委任契約では、採用や教育のコスト削減も期待できます。正社員を雇用する場合と比較して、社会保険料や福利厚生費などの固定費がかからないからです。
多くのSES企業でエンジニアの育成・研修が実施されているため、自社での教育コストを抑えられます。業務経験が豊富な即戦力を確保できるため、社内のリソースを本来のコア業務に集中させることも可能です。
また、プロジェクトの規模に応じて契約期間を調整できるため、エンジニアに支払う報酬を変動費として扱えます。コストを最小限に抑えながら、一時的な人材確保を求める企業にも効果的です。
準委任契約でも注意したいSESのデメリット
SESを活用するうえで、以下のようなデメリットも考慮しておく必要があります。
- 中間マージンによるコスト増加
- 短期間・小規模な依頼に向いていない
- 自社の要件とスキルレベルのミスマッチ
契約形態にかかわらず、SESが必ずしも自社の要件にマッチするとは限りません。懸念点が残る場合は、フリーランスをはじめとする契約形態も検討してみましょう。
中間マージンによるコスト増加
SES企業との契約では、エンジニアへ支払う報酬に中間マージンが含まれています。中間マージンとは、SES企業の利益や管理コストなどの間接費用です。
たとえば、以下の表は、報酬単価「60万円/月」のエンジニアに支払われる総額費用の一例です。発注企業の支払い総額とエンジニアの報酬単価は、中間マージンによって差が生じています。
| エンジニアの報酬単価 | 60万円/月 |
| 委託先企業のマージン率 | 報酬総額の40% ※マージン率は企業によって異なる |
| 発注企業の支払い総額 | 100万円/月 ※60万円+(100万円×40%) |
費用対効果を重視したい場合は、その他の契約形態を検討するのも有効な判断です。フリーランスのように直接契約(準委任契約)を結ぶケースでは、支払い費用をエンジニアの報酬単価に一本化できます。
短期間・小規模な依頼に向いていない
基本的には月単位で結ぶSESとの契約ですが、数か月程度のまとまった期間を希望される傾向があります。その理由は委託先企業として、安定した収益確保やエンジニアの待機期間を減らしたい意図があるためです。
そのため、短期間の人材確保や小規模なプロジェクトには、要件のミスマッチが発生するケースも少なくありません。月の稼働時間が少なかったり短期間で完結できたりする場合は、スポット対応を得意とするフリーランスエンジニアを探すほうがニーズにマッチする可能性は高まります。
自社の要件とスキルレベルのミスマッチ
SESで確保したエンジニアに、必ずしもプロジェクトに求めるスキルがあるとは限りません。なぜなら、委託先企業は自社に「所属または提携しているエンジニア」から人員を割り当てるためです。
また、SES企業に所属するエンジニアの状況次第では、自社のプロジェクトにアサインできない可能性もあります。準委任契約では法的に選考を目的とする事前面接ができないため、アサインされるエンジニアのミスマッチが発生するケースも想定しておきましょう。
準委任契約の偽装請負リスクと対策
SESの準委任契約で注意すべき観点は「偽装請負」のリスクです。
「偽装請負」とは・・・
書類上、形式的には請負(委任(準委任)、委託等を含む)契約ですが、実態としては労働者派遣であるものを言い、違法です。
(引用:偽装請負について|東京労働局)
指揮命令権のない準委任契約では、実態として派遣契約に近い状態でエンジニアを働かせてしまうと偽装請負と判断されるリスクがあります。意図せず偽装請負の状態に陥らないためにも、具体的なルールと対策を理解しておきましょう。
偽装請負にならないための指揮命令系統
準委任契約では、エンジニアに対して発注側の企業が以下のような業務指示を出せません。
- 業務プロセスの指定
- 始業・終業時間の指示
- 契約外の業務依頼
エンジニアに対する指揮命令権をもつのは、雇用主であるSES企業です。現場の実態が「派遣契約と同じ」であると、偽装請負と判断されるリスクが高まります。また、業務内容の変更や優先順位の見直しなども、SES企業の責任者と協議しながら調整しましょう。
指名不可?顔合わせでミスマッチを防ぐ対策
準委任契約では、SES企業との事前面談は禁止されていません。ただし、特定のエンジニアの指名や選考を目的として行うと、偽装請負や労働者派遣法違反と判断されるおそれがあります。
しかし「職場見学」「顔合わせ」という名目の事前面談では、担当エンジニアに求めるスキルレベルや業務内容を明確に伝える必要があります。経歴書やスキルシートによる候補者の把握は可能ですが、人材の選択ではなく契約の可否を目的とする配慮が必要です。
SESにおける課題解決にはフリーランス活用も効果的
エンジニア不足を解消するための手段として、フリーランスエンジニアの活用も有力な手段です。とくに契約の柔軟性や費用対効果に課題を感じている場合は、自社に適した状況改善を期待できます。
フリーランスもSESと同様に準委任契約を結ぶケースが一般的です。しかし、組織ではなく「個人」と契約するため、以下のようなメリットも得られます。
- 契約コストを最小限に抑えやすい
- 柔軟な条件で契約期間を調整しやすい
- 専門分野に特化した人材を確保しやすい
関連記事:SESとフリーランスの違い|自社にマッチする委託先の選び方を解説
契約コストを最小限に抑えやすい
個人のフリーランスと直接契約することで、中間マージン不要のコストを実現できます。エンジニアに支払う報酬そのものが契約金額となるため、同等のスキルをもつ人材をより適正な価格での確保が可能です。
また、エンジニアの募集対応や契約手続きを効率化したい場合は、エージェントサービスを活用するのも効果的です。仲介手数料として一定のマージンは発生しますが、SESと比較しても必ずしも高額とは限りません。エージェントでは契約手続きのサポートを受けられるため、費用対効果の高さも期待できます。
関連記事:フリーランスのインフラエンジニアと契約した場合の単価相場とは?|単価交渉のコツも解説
柔軟な条件で契約期間を調整しやすい
フリーランスエンジニアには、短期のプロジェクトやスポット的な業務に対応しやすい強みがあります。月単位での契約が一般的なSESとは異なり「数週間のみ」「週3日のみ」の短期間かつ部分的な契約も可能です。
フリーランスに業務委託する場合も、SESと同様に直接的な指揮命令権はありません。ただし、指示系統が間接的にならないため、メンバー同士で意思疎通しやすいメリットがあります。
関連記事:フリーランスのインフラエンジニアに業務を委託する流れとは?単価相場や注意点も解説
専門分野に特化した人材を確保しやすい
専門分野の最新技術やニッチなスキルを求めるなら、幅広いフリーランス市場からエンジニアを探すほうが効率的です。とくにフリーランスであれば、候補者を自社で直接選考できます。
職務経歴書やスキルシートから候補者の実績を確認できるため、自社の要件にマッチする人材かどうかの判断もスムーズです。候補者の評価基準に不安が残る場合は、フリーランス専門のエージェントサービスを活用してみましょう。

準委任契約(SES)の検討前にクロスネットワークへご相談を
SESにおける準委任契約の活用は、事業スピードを加速させる有効な手段です。即戦力の確保や柔軟な人員調整が求められる状況には、業務の遂行を目的とする準委任契約が適しています。
しかし、契約の仕組みや注意点の理解が不足すると、偽装請負のリスクやミスマッチによるコストの増加が発生する可能性も少なくありません。契約の柔軟性や費用対効果を重視したい場合は、フリーランスエンジニアを活用するのが効果的です。
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元エンジニアのWebライター。自動車部品工場のインフラエンジニアとして、サーバー・ネットワークの企画設計から運用・保守まで経験。自分が構築したインフラで数千人規模の工場が稼働している達成感とプレッシャーは今でも忘れられない。
