通信インフラの整備において、セキュリティの確保は重要な課題です。高度な専門スキルが求められるため、人材確保に注力している企業も多いでしょう。
しかし、ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアのどちらが適任か悩んでいる方も多いはずです。
そこで本記事では、ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアの違いを、役割や業務内容、必要なスキルを中心に解説します。あわせて、両者の領域を包括的に支えるインフラエンジニアの有効性についても解説するので、参考にしてみてください。
ネットワークインフラにおけるセキュリティ対策の重要性
企業のITインフラを保護するためには、ネットワークとセキュリティの双方を適切に理解し、連動させて対策を講じることが欠かせません。
ネットワークの設計や運用はセキュリティ対策の基盤となるため、両領域は密接に結び付いています。どちらか一方が弱ければ企業全体の安全性が損なわれるため、どのような脅威にさらされているかを把握することが、人材確保を検討するうえでも重要です。
この章では、 サイバー攻撃の傾向と企業が抱えるリスクについて解説します。採用戦略を立案する前に、現状を正しく認識しましょう。
サイバー攻撃の傾向と企業が直面するリスク
▲出典:NICTERにおけるサイバー攻撃関連の通信数の推移|総務省
サイバー攻撃は年々増加傾向にあり、企業規模を問わず深刻な脅威となっています。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発したNICTERによると、2015年から2024年までに観測したサイバー攻撃関連の通信数は約10.8倍に増加しています。
サイバー攻撃を受けた企業は、さまざまなリスクに直面します。機密情報が漏洩すれば、取引先からの信頼を失うでしょう。業務が停止すれば、売上の損失に加えて多額の復旧コストが発生します。
ただし、攻撃を完全に防ぐことは不可能であると理解しておきましょう。重要なのは、万が一攻撃を受けた場合でも被害を最小限に抑える体制を構築することです。
関連記事:ITインフラにおけるセキュリティとは?重要性と企業の被害事例・対策も解説
ネットワークインフラとセキュリティは密接に関連
ネットワークへの理解が不十分だと、適切なセキュリティ対策を講じることはできません。通信インフラの構造を把握していなければ、どのポイントを守るべきか判断できないためです。同様に、セキュリティ対策が不十分なネットワークは、安全性に欠ける状態で運用されることになります。高速で便利な通信を実現できても、防御が脆弱であれば情報漏洩やシステム停止などのリスクが残るでしょう。
また、ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアの連携が不十分な場合も、深刻なトラブルにつながる可能性があります。たとえば、ネットワークの構成の変更時にセキュリティ設定が漏れてしまったり、攻撃の侵入経路を見逃してしまったりすることが考えられます。
採用戦略を検討するときには、両分野の知識をもつ人材を確保することが重要です。
ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアの役割とは
ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアは、名称は似ていますが役割がおおきく異なります。
ネットワークエンジニア:通信インフラを設計・構築・運用する専門職
セキュリティエンジニア:システムを脅威から防御する専門職
それぞれの役割を正しく理解することで、自社に必要な人材像を明確にできるでしょう。
ネットワークエンジニア|通信インフラを設計・構築・運用する専門職
ネットワークエンジニアとは、企業内外のシステムを安全かつ安定して接続し、データ通信を実現する専門家です。具体的な役割は、以下の4つに分類されます。
企業の規模や業務内容にあわせて最適なネットワークを設計
設計に基づいてネットワークを構築・設定
パフォーマンスの監視や定期メンテナンスの実施
通信障害発生時の原因特定・復旧対応
企業にとって、ネットワークエンジニアは業務効率化や生産性向上、社内外のコミュニケーションを安定して行うための基盤の提供という価値をもたらします。
セキュリティエンジニア|システムを脅威から防御する専門職
セキュリティエンジニアは、企業の情報資産をサイバー攻撃や不正アクセスから守る専門家で、以下のような役割を担います。
セキュリティ対策の企画・設計
脆弱性診断・ペネトレーションテスト(侵入テスト)の実施
サイバー攻撃の監視
不審な動きの検知と初動対応および復旧作業
侵入経路や発生要因の特定
企業にとってセキュリティエンジニアは、情報漏洩の防止や事業継続性の確保、顧客・取引先からの信頼維持におおきく貢献する重要な存在です。
サイバー攻撃による損失は、企業活動全体に影響を及ぼすこともあるため、セキュリティエンジニアの重要性は年々高まっていると言えます。
ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアの業務・スキルの違い
採用要件を決めるには、それぞれの職種がどのような業務を担当し、どのようなスキルを求められるのかを理解する必要があります。
業務内容と必要スキルを把握することで、組織として期待したい役割や、どのような人材が適しているかを明確にできるでしょう。
両職種の違いを整理しながら、自社に必要な人材像を考えるうえで押さえておきたいポイントも解説します。
ネットワークエンジニアの主な業務と必要スキル
項目 | 内容 |
主な業務 |
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必要スキル |
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主な業務は、ネットワーク環境の設計・構築・運用・保守です。機器の設定や監視を通じて、社内外の通信を安定させ、業務システムが円滑に連携できる環境を維持します。
セキュリティ面では、不正アクセスを受けにくい構成を整えたり、VPN を利用した安全な接続環境を構築したりする役割も担います。
必要なスキルは、ネットワーク機器とプロトコルに関する深い理解、セキュリティ技術の知識、トラブルシューティング力などです。加えて、自動化のためのスクリプト作成やクラウド特有の技術要件に関する知識も必要です。
関連記事:ネットワークエンジニアの仕事内容とは?年収や資格・将来性などもわかりやすく解説
関連記事:ネットワークエンジニアに必要なスキルとは?勉強方法やおすすめの資格も紹介
セキュリティエンジニアの主な業務と必要スキル
項目 | 内容 |
主な業務 |
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必要スキル |
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セキュリティエンジニアは、企業の情報資産を守るために、リスク分析・対策設計・監視・インシデント対応までを担当する専門職です。
また、セキュリティ製品を導入するだけでは十分とは言えません。どこにリスクがあるか、どのような対策が最適かといった分析なども担います。
セキュリティインシデントが発生した場合は、状況を素早く把握し、被害を最小限に抑えるための初動対応が重要です。さらに、その後の影響範囲の分析や復旧、再発防止までを担当します。
また、サイバー攻撃は高度化・巧妙化しているため、常に最新知識・技術動向をキャッチアップする必要があります。
両者の共通するスキルと担当の境界
両者は領域が密接しているため、下表のように共通する基礎スキルと重なる領域、明確な相違点を理解しておく必要があります。
項目 | 内容 |
共通する基礎スキル |
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担当が重なる領域 |
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明確な相違点 |
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各職種の基礎スキルには共通点がありますが、業務範囲や責任の所在には明確な違いがあります。たとえば、VPNやファイアウォール設定など重なる領域では、ネットワークエンジニアが接続や構成を整え、セキュリティエンジニアが通信ルールやポリシーを設計するなど、役割が分かれるケースが一般的です。
自社の課題や求める業務範囲に応じてどこまでをどの職種に任せるのかを整理することで、役割分担や採用判断がしやすくなるでしょう。小規模企業では両方を兼任することもありますが、担当範囲が広くなる分、専門性が薄くなる可能性があることに注意が必要です。
ネットワークエンジニア・セキュリティエンジニアのどちらを採用すべきか
ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアは関わる領域が一部重なるものの、専門性が異なります。どちらを採用すべきかは、自社の課題や優先すべき取り組みによって変わります。
一般的には以下の基準で採用する企業が多いです。
通信インフラの刷新が課題の場合はネットワークエンジニア
サイバー攻撃対策を優先する場合はセキュリティエンジニア
自社が直面している課題を整理し、必要なスキルや取り組みの優先順位を明確にすることで、限られたリソースのなかでも適切な人材を確保しやすくなります。
通信インフラの刷新が課題の場合はネットワークエンジニア
通信速度の遅さやネットワークの不安定さ、機器の老朽化といった課題がある場合は、ネットワークエンジニアの採用が有効です。具体的には以下のようなケースで力を発揮します。
ネットワーク機器が老朽化している
拠点が増えて通信環境が複雑化している
オンプレミスからクラウド移行を計画中
在宅勤務環境の整備が遅延している
ネットワークエンジニアを採用することで、通信環境の最適化や安定性の向上による、業務効率化や生産性向上などを期待できます。
サイバー攻撃対策を優先する場合はセキュリティエンジニア
サイバー攻撃の脅威に対して脆弱な場合は、セキュリティエンジニアを優先したほうが良いでしょう。具体的には以下のような企業が当てはまります。
従業員のセキュリティ教育が十分に行われていない
監査でセキュリティに関する重大な指摘を受けた
取引先から対策を求められている
個人情報保護法への対応が不十分
セキュリティエンジニアを確保することで、情報漏洩リスクの低減や企業の信頼性向上、法令遵守の強化が期待できます。セキュリティエンジニアの必要性を経営層へ説明するときに「サイバー攻撃による損失は数千万円から数億円規模になる可能性がある」という具体的な数字を示すと理解が得られやすくなるしょう。
両方採用すべきケースと優先順位の決め方
一定規模以上の企業では、ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアの両方が必要となるケースがあります。具体的には以下のようなケースで両者が求められます。
複数拠点を展開しており、ネットワーク構成が複雑化している
機密情報を大量に取り扱う
金融や行政など高いセキュリティ水準が要求される
予算制約がある場合は、緊急度と影響範囲で優先順位を判断しましょう。たとえば、通信障害のリスクが高い場合はネットワークエンジニア、取引先からサイバー攻撃への具体的な対策を求められているならセキュリティエンジニアが優先と言えます。
このように、現状のボトルネックに応じてどちらかを先に確保し、体制が整った段階で不足している専門領域を補完するという進め方も有効です。段階的に採用することで、限られた予算のなかでも必要な体制を整えやすくなります。
ネットワーク・セキュリティの両面を担えるインフラエンジニア
ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアの役割が専門化する一方で、両方の分野に知見のある「インフラエンジニア」の重要性が高まっています。
予算制約がある企業にとって、複数の専門エンジニアを採用することは困難な場合があります。そのような状況において、インフラエンジニアは現実的かつ有効な選択肢と言えるでしょう。
この章では、インフラエンジニアが担う具体的な業務例と、複数領域をカバーできることで得られるメリットについて解説します。
インフラエンジニアが担う具体的な業務例
インフラエンジニアとは、企業のIT基盤を構成する複数の領域を横断して担当できる技術者のことで、業務範囲は以下の通りです。
業務領域 | 主な業務内容 |
ネットワーク |
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サーバー |
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セキュリティ |
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クラウド |
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インフラエンジニアがとくに力を発揮するのは、複数の領域にまたがる対応や判断が必要な場面です。たとえば、通信速度の改善とセキュリティ強化を同時に実施する場合、ネットワークとセキュリティを分けて検討するのではなく、全体の構成を踏まえて判断できます。
たとえばネットワークの設定を変更するとき、その変更がアクセス制御や通信経路の安全性にどのような影響を与えるのかを踏まえて判断できる点も、インフラエンジニアの強みです。
複数領域を横断できることで得られるメリット
インフラエンジニアは、ネットワーク・サーバー・セキュリティなど複数の領域を横断して対応できるため、限られたリソースで体制を整えたい企業に適しています。専任のネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアをそれぞれ確保するのが難しい場合でも、インフラ全体の整合性を保ちながら運用を進められる点が大きなメリットです。
また、担当者が分かれていると構成変更や障害対応のときに認識のずれが生じることがあります。ネットワークとセキュリティの両方を理解するインフラエンジニアがいれば、判断がスムーズになり、連携の手戻りを防ぎやすくなります。
ただし、ネットワークやセキュリティなど各分野の知識は、専門エンジニアのほうが詳しい場合があります。段階的アプローチとしては、まずインフラエンジニアを採用し、事業拡大時にネットワークエンジニアやセキュリティエンジニアのような専門職を確保するのも、有効な戦略です。
関連記事:インフラエンジニア採用が難しい理由と成功する企業の採用戦略を解説
ネットワークエンジニア・セキュリティエンジニアを確保する主な手段
ネットワークやセキュリティ領域では専門技術が求められるため、要件に合う人材を探すことが難しい傾向にあります。優秀なエンジニアを採用するためには、以下のように複数のルートを比較検討することが重要です。
経験者の正社員採用
SESの活用
フリーランスエンジニアの活用
それぞれの特徴を理解し、自社の課題にあわせた手段を選択をしましょう。
経験者の中途採用
社内で長期的に技術力を高めたい場合、経験者の中途採用は効果的な手段です。
実務経験のある人材であれば、習得してきた知識を自社のノウハウとして蓄積しやすく、企業文化にも順応しやすい点がメリットです。
一方で、ネットワークやセキュリティの実務経験者は市場で需要が高く、採用までに時間がかかりやすい傾向があります。その結果、選考にかかるコストが増える可能性がある点には注意が必要です。
採用成功のポイントは、各職種のスキル要件を明確にした求人票の作成です。あわせて、選考プロセスや評価基準を明確にしておくことで、候補者が判断しやすくなり、採用の確度を高められます。
関連記事:インフラエンジニアの中途採用は難しい?即戦力人材を迅速に獲得するコツを解説
SESの活用
SESとは、準委任契約でエンジニアの作業時間を提供してもらう契約形態のことです。
ネットワーク移行やセキュリティ監査対応など、日々の運用や作業量が増える局面で工数を安定的に確保できる点がメリットです。契約の範囲内であれば、プロジェクトの状況に応じて期間・人数を調整することも可能です。
一方、SESは成果物やナレッジ移管を前提とした契約ではないため、ネットワーク構成やセキュリティポリシー策定などの知見が蓄積しにくいデメリットがあります。また、準委任契約のため直接指揮命令できず、インシデント対応や独自要件への柔軟な対応が難しい場合もあります。
SESは、ネットワーク機器のリプレースやセキュリティ強化などの短期・中期的な業務量の増減に対応したい場合に適した手段です。一方で、特定技術の導入や高度な専門性が求められる案件では、フリーランス活用のほうが適しているケースもあります。
関連記事:SESのネットワークエンジニアとは?メリット・デメリットとフリーランスとの比較
関連記事:ネットワークエンジニア派遣会社の失敗しない選び方|契約の流れも解説
フリーランスに業務委託
フリーランスとは、個人で企業から業務を委託されている外部人材のことで、ネットワーク設計・構築や脆弱性対策など特定領域に強みをもつエンジニアが豊富です。必要なスキルが明確な場合に、専門人材を短期間で確保しやすい点がメリットです。
また、SESではエンジニアの報酬に加えて管理費や営業費などもかかりますが、フリーランスの場合はエージェントを経由しない限り中間マージンが発生しません。
さらに、契約期間や依頼内容、報酬を柔軟に調整できるのも強み。「ゼロトラスト導入のコンサルティングのみ」「脆弱性診断を3か月間実施」など必要な業務のみ任せられるため、コストを最適化しやすくなります。
正社員採用が難航している企業に有効な手段で、特定技術の導入やスポット案件との相性も良好です。
関連記事:インフラエンジニアへの外注とは?業務委託のメリットとおすすめのエージェントも紹介
ネットワークエンジニア・セキュリティエンジニアを探すならクロスネットワークがおすすめ
ネットワークエンジニアとセキュリティエンジニアは、役割や業務内容、求められるスキルなどが異なるため、以下のように自社の課題に合った人材を採用する必要があります。
通信インフラの刷新が課題の場合はネットワークエンジニア
サイバー攻撃対策を優先する場合はセキュリティエンジニア
また、ネットワークとセキュリティの両面を横断できるインフラエンジニアを活用すれば、通信インフラを包括的に設計・構築・運用しやすくなります。しかし、高度なスキルをもつエンジニアは獲得競争が激しく、採用要件を満たす人材の確保は容易ではありません。
そこで、ハイスキルなインフラエンジニアを確保する手段として、フリーランスの活用が注目されています。
クロスネットワークでは、ネットワーク・セキュリティそれぞれの分野に強みをもつインフラエンジニアを含む1500名以上の厳選されたフリーランス人材から、ニーズに合わせて最適な即戦力人材を最短即日でご提案、最短3日でのアサインも可能です。
「稼働時間の目安を見積もりたい」「必要なスキル要件を明確にしたい」といったお悩みにも業界に精通したコンサルタントが案件内容をヒアリングし、最適な採用要件をアドバイスします。
また、週2〜3日からの柔軟なアサインも可能です。
詳細なサービス内容については、無料ダウンロードが可能なサービス資料をご覧ください。
ご相談はお問い合わせページより承っており、平均1営業日以内にご提案します。インフラエンジニア採用でお困りの際は、ぜひクロスネットワークにご相談ください。
- クロスネットワークの特徴
- クロスネットワークに登録しているインフラエンジニア参考例
- 各サービスプラン概要
- 支援実績・お客様の声
新卒で大手インフラ企業に入社。約12年間、工場の設備保守や運用計画の策定に従事。 ライター業ではインフラ構築やセキュリティ、Webシステムなどのジャンルを作成。「圧倒的な初心者目線」を信条に執筆しています。
