インフラ構築や保守・運用の委託先としてSIer企業を検討するときに「どの企業に依頼すべきか迷ってしまう」といった悩みに直面した経験はありませんか?
SIer企業は、成り立ちによって大きく5つに分類されており、それぞれの得意な業務領域や企業文化が異なります。分類ごとの特徴を理解することは、判断材料を整理するための重要な取り組みです。
そこで本記事では、SIerの分類における違いをわかりやすく解説します。記事の後半では自社の課題にあわせた委託先の選び方も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
SIerとは|設計から運用・保守まで請け負う企業
▲出典:総務省|平成26年版 情報通信白書|世界のICT産業構造の変化
SIer(システムインテグレーター)とは、企業のインフラ構築やシステム開発にかかわる業務を一括で請け負う事業者です。企画・要件整理から設計・構築、稼働後の運用・保守まで、システム導入に関する一連の工程を支援します。
また、上図のようにSIerの担当領域は幅広く、オンプレミスからクラウドサービスまで多岐にわたるのも特徴的です。自社の課題にあった委託先を選ぶためには、SIerの役割や分類を正しく理解したうえでの比較検討が欠かせません。
主な仕事内容
| 業務フェーズ | 主な仕事内容 |
|---|---|
| 上流工程 |
|
| 下流工程 |
|
| 導入工程 |
|
SIerの業務範囲は、顧客の要望をシステムとして形にするまでの全工程です。仕事内容を大きく分けると、上表のように3つのフェーズに分類されます。
上流工程の目的は、顧客が求める要件や課題のヒアリングと実現するための設計です。上流工程の知見が不足する企業では、SIerのノウハウが役立ちます。
下流工程では、設計をもとにインフラやシステムの構築・テストを実施します。インフラ全体の連携をチェックしたら、本番環境で稼働させる導入工程に進んでいく流れです。関連記事では、SIerの仕事内容を詳しく解説しています。
関連記事:SIerの仕事内容を解説|実はフリーランスで解決できるケースも?
ベンダーとの違い
| SIer | システム開発やインフラ構築を一貫して請け負う企業 |
| ベンダー | 自社製品・サービスを中心に事業課題を解決する企業 |
SIerとベンダーの主な違いは、役割とビジネスモデルにあります。
SIerは、システム開発やインフラ構築を一貫して請け負う企業です。企業の業務フローや課題にあわせて、要件に応じたシステムやインフラを設計・構築します。
一方でベンダーは、自社製品・サービスを中心に事業課題を解決する企業です。自社製品で顧客の課題を解決する役割があり、導入のスピードやサポートの手厚さに魅力があります。
関連記事:SIerとベンダーの違いとは?委託先選びに失敗しない判断基準を解説
SIerの5つの分類
| 分類 | 特徴 | 強み |
|---|---|---|
| 1.メーカー系 | ハードウェアやIT機器の メーカー企業を親会社にもつSIer | 親会社のハード・ソフトを用いた 開発が得意 |
| 2.ユーザー系 | 大手企業の情報システム部門から 独立したSIer | 親会社の業界やビジネスに 精通している |
| 3.独立系 | SIer事業を目的として 設立された企業 | クライアントの要望にあわせて 自由度の高い提案が可能 |
| 4.外資系 | 海外IT企業の日本法人として 事業を展開するSIer | 海外企業のITサービスを 導入しやすい |
| 5.コンサル系 | ITコンサルティングファームで 開発・インフラ構築を担当するSIer | 顧客の経営課題や業務改善を 企画段階からサポート |
上表のように、SIerの分類は企業の成り立ちによって異なります。それぞれの分類によって得意な領域や提案のスタンスが異なるため、事前に特徴を把握しておきましょう。
メーカー系|自社ハードウェアの連携が魅力
| 特徴 | ハードウェアやIT機器のメーカー企業を親会社にもつSIer |
| 強み | 親会社のハード・ソフトを活用した提案力が魅力 |
| 代表的な企業 |
|
メーカー系SIerは、ハードウェアメーカーを親会社にもつ企業です。親会社が製造・開発した機器やソフトの技術リソースを活用できる強みがあります。
インフラ構築において、ハードウェアとソフトウェアの相性は無視できません。自社製品の仕様を熟知するメーカー系SIerであれば、性能を最大限に引き出す組み合わせを提案できます。
また、親会社の製品に対するサポート体制の手厚さも魅力です。製品のアップデートや不具合対応など、長期的な運用を見据えた支援が受けられます。
ユーザー系|親会社の業務ノウハウの安定性
| 特徴 | 大手企業の情報システム部門から独立したSIer |
| 強み | 親会社の業界やビジネスに精通している |
| 代表的な企業 |
|
ユーザー系SIerは、商社や金融をはじめとする大手企業の情報システム部門から独立した企業です。親会社のシステムを開発・運用していた組織が、ノウハウを外販するために分社化しています。
そのため、親会社が属する業界のビジネスモデルや業務フローを熟知しているのも特徴です。発注側が抱える課題を想定し、業界特有の制約や慣習を踏まえて提案できる強みがあります。
また、IT以外の業界知識をもつ企業が親会社となるケースも少なくありません。親会社の成功事例を自社に取り入れながら、自社業務と親和性の高い提案も期待できます。
独立系|ベンダーフリーな提案と開発の柔軟性
| 特徴 | SIer事業を目的として設立された企業(特定の親会社をもたない) |
| 強み | クライアントの要望にあわせて自由度の高い提案が可能 |
| 代表的な企業 |
|
特定の親会社をもたない独立系SIerは、SIer事業を目的として設立された企業です。メーカー系やユーザー系とは異なり、親会社の意向や製品に縛られず中立的に提案できる特徴があります。
そのため、幅広い機器やサービスを組み合わせながら、顧客の課題解決に適した柔軟な提案が可能です。自社の要望にあわせてゼロベースで提案してほしい企業には、独立系SIerが適しています。
外資系|グローバルな展開力に強みあり
| 特徴 | 海外IT企業の日本法人として事業を展開するSIer |
| 強み | 海外企業のITサービスを導入しやすい |
| 代表的な企業 |
|
外資系SIerは、海外のIT企業が日本国内に拠点を設けて展開している企業です。グローバル市場で培った最新のテクノロジーや開発手法を導入できます。
とくに自社の海外進出を検討している場合は、現地の商習慣や法規制に対応したシステム構築が必要です。外資系SIerであれば、国をまたいだプロジェクトでも一貫したサポートを期待できます。
コンサル系|経営・IT戦略の立案からサポート
| 特徴 | ITコンサルティングファームで開発・インフラ構築を担当するSIer |
| 強み | 経営戦略や業務課題をIT戦略に結びつけるコンサルティング力に強みがある |
| 代表的な企業 |
|
コンサル系SIerは「ITコンサルティングファーム」でインフラ構築やシステム開発を担当する企業です。インフラを構築するだけでなく「なぜそのシステムが必要なのか」「導入によってどの程度の利益が出るか」といった経営視点からのアプローチを得意としています。
コンサル系SIerの強みは、上流工程における企画力と提案力です。現状の業務課題を洗い出し、あるべき姿を描いたうえで、経営戦略を含めたインフラを設計します。
経営層と対話しながらプロジェクトを進められるため、全社的なDXや大規模な業務改革を進める企業に最適です。高度なコンサルティング能力により、事業を成長させる戦略パートナーとしての役割を期待できます。
【課題別】自社にあったSIerの分類を選ぶポイント
自社にあったSIerの分類を選ぶためには、解決したい課題の明確化が必要です。SIerの分類によって得意分野が異なるため、目的にあわない企業を選ぶと期待した成果を得られない可能性があります。
業界の特性やプロジェクトの規模、将来的な内製化の方針などを整理しながら、これから解説するポイントを委託先の判断に役立ててみてください。
メーカー系|システムの安定性と基盤強化が必要な企業
システムの安定性を優先したい企業には、メーカー系SIerが適しています。とくに金融機関や公共インフラのように、24時間365日の稼働が求められる場面に重要視したい分類です。
親会社が製造・開発する製品を熟知しているメーカー系は、ハードウェアからソフトウェアまで一貫したサポートを提供できる強みがあります。親会社の主要製品に統一すれば、問い合わせ窓口の一本化による効率的なサポートも可能です。
すでに自社で採用している製品やサービスがある場合には、関連メーカーを親会社にもつSIer企業も検討してみましょう。
ユーザー系|業務の効率化や運用改善が必要な企業
業務の効率化や運用の改善を目指す企業には、ユーザー系SIerが適しています。親会社での運用実績があるため、業界特有の業務プロセスを深く理解している強みがあるからです。
たとえば、物流業界の企業であれば、在庫管理の複雑さや配送ルートの最適化などの課題をスムーズに共有できます。業務の流れを理解しているからこそ、実際のインフラ運用に適した企画・設計が可能です。
独立系|構築・改修のスピードと柔軟性を求める企業
インフラの構築・改修のスピードと柔軟性を求める企業には、独立系SIerが適しています。特定の親会社や系列グループに属さないため、幅広いメーカーのハードウェアやソフトウェアの提案が可能です。
また、費用対効果を重視したい場合にも有効な選択肢です。必要な機能に絞ってツールを選定したりオープンソースのソフトウェアを活用したりと、自社の要件や予算にあわせて調整できます。
すでに社内で複数のメーカー製品が混在している環境でも、独立系SIerであれば柔軟な対応が可能です。既存システムを活かしながら、新しい機能を付け加えるといった改修もスムーズに進められます。
外資系|最新技術やグローバル基準を取り入れたい企業
グローバルスタンダードなシステムやプロセスを導入したい企業は、外資系SIerを検討するのも効果的です。海外で主流の開発手法やシステム構成を熟知しているため、国内外の法規制やセキュリティ基準に対応できるインフラを導入できます。
たとえば、AIを活用したデータ分析やクラウドサービスの導入を検討する場合には、最新のナレッジや成功事例の適用が可能です。技術の更新サイクルが早いIT業界において、最先端の知見を活用できるアドバンテージを得られます。
また、海外拠点を検討している企業であれば、国際基準のセキュリティ対策を導入できるのも魅力的です。
コンサル系|経営課題からシステムを再構築したい企業
経営課題の解決を目的としている企業には、コンサル系SIerも有効な選択肢です。古くなったシステムやインフラを更新するだけでなく、以下のようなビジネスの視点でプロジェクトに携わってくれます。
- 売上を伸ばすためにどうデータを活用するか
- コスト削減のために業務全体をどう変えるか
- DXを実現するためにどこから手をつけるか
コンサル系SIerの強みは、経営層との対話能力です。高額になりがちなシステム投資が「将来的にどれだけの利益を生むか」を論理的に説明できます。経営層向けの説明資料やプレゼンテーションを含め、ビジネス視点での提案を期待できるのも魅力です。
SIerの外部委託で考慮しておきたい3つの注意点
SIerの外部委託には、人材不足の解消やインフラ構築を一任できるといったメリットがあります。しかし、外部企業に業務を任せる仕組みのため、以下のように発生してしまうデメリットも少なくありません。
- 依頼コストが高額になる可能性もある
- 仕様変更や小規模な対応が遅くなりやすい
- 自社にノウハウを蓄積しにくい(委託先に依存しやすい)
SIerという選択肢を有効活用するため、あらかじめ注意点も把握しておきましょう。
依頼コストが高額になる可能性もある
SIerに外部委託する場合には、依頼コストが高額になる可能性もあります。要件定義から運用・保守まで一貫して任せられる反面、管理費や営業費などを含めたコストが見積もりに含まれているからです。
とくにコストが膨らみやすいケースは、インフラ構築の要件があいまいな状態でスタートするパターンです。構築したいインフラの要件や解決したい課題が明確でなければ、SIer企業はリスクを見越して高めの見積もりを提示せざるを得ません。
また、品質を担保するために多人数のチームを編成するケースもあり、人月単価の積み上げによってコストが大きくなりやすい傾向もあります。企業との契約では中間マージンも発生するため、費用対効果が下がってしまう可能性も考慮しておきましょう。
関連記事:SIerの単価相場とは?適切な予算の設定方法も解説
仕様変更や小規模な対応が遅くなりやすい
▲出典:総務省|令和元年版 情報通信白書|ICT人材の再配置
社内でインフラ構築を進める場合に比べて、SIerの外部委託では対応スピードが遅くなる可能性もあります。とくに意思決定の承認フローが複雑になりやすい大手SIerほど、小規模な変更や改善がすぐに反映できないケースも少なくありません。
また、締結した契約内容(人員や期間など)の変更が難しいため、プロジェクトの状況にあわせてリソースを柔軟に増減できない可能性も高まります。近年ではアジャイル型の方針を採用するSIer企業も増えていますが、要件定義で立てた計画に沿ってプロジェクトを進めるウォーターフォール型の方針を採用するケースが一般的です。
計画に沿って進めるウォーターフォール型は、急な仕様変更に対して方針を検討しなおす時間だけでなく、追加コストがかかる可能性もあります。対応のスピードや柔軟性を重視する場合は、準委任契約を選択できるフリーランスの活用が効果的です。
自社にノウハウを蓄積しにくい(委託先に依存しやすい)
社内に技術や運用のノウハウが蓄積されにくいこともSIerの外部委託で懸念しておきたいポイントです。設計から構築まで一貫して任せられる反面、自社のメンバーがノウハウを把握できない「ブラックボックス化」が進んでしまいます。
以下は、SIerへの業務依存度が高まることによる具体的なデメリットです。
- トラブル発生時の一次対応に遅れてしまう
- 軽微な機能変更・改修に社内リソースで対応できない
- 内製化や担当者の引き継ぎが進まない
業務ノウハウの共有やドキュメント化など、自社の担当者が構築プロセスに関与できる体制構築が重要です。
課題に応じてSIer以外の選択肢を検討するのも効果的
| 委託先の比較 | SIer | SES | フリーランス |
|---|---|---|---|
| 契約形態 | 主に請負契約 | 主に準委任契約 | 請負契約または準委任契約 |
| 発注側のメリット |
|
|
|
| 発注側のデメリット |
|
|
|
インフラ構築を外部委託する選択肢は、上表のようにSIerだけではありません。とくにコストや柔軟性を重視する場合は、フリーランスを活用するのも有効な手段です。
ここからはSIerとフリーランスの違いをもとに、自社の課題にあわせて比較検討する観点を解説します。

プロジェクト全体の設計・構築を依頼するなら「SIer」
SIerの強みは、要件定義から運用・保守まで一括して請け負う体制です。社内にインフラ構築やシステム開発のノウハウが不足している企業にとって、SIerには「すべてを任せられるメリット」があります。
ただし、契約のコストや柔軟性に懸念事項もあるため、プロジェクト全体を任せる場合はSIerの分類や依頼範囲などの慎重な判断も欠かせません。関連記事ではSIerに依頼するメリットを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:SIerに依頼するメリット|インフラ構築を中心に目的別・種類別で解説
柔軟な要件でリソース不足を解消するなら「フリーランス」
専門的なスキルや経験をもつインフラエンジニアを確保するなら、フリーランスの活用が効果的です。フリーランスは個人事業主として活動しているため、プロジェクトの期間や依頼範囲にあわせて柔軟に人材を確保できます。
また、プロジェクトの状況にあわせて契約期間や稼働時間を調整できるため、委託コストを最小限に抑えられるのも魅力です。急な欠員補充や突発的なプロジェクト対応など、契約の柔軟性と費用対効果を重視するならフリーランスも検討してみましょう。
候補者探しや契約手続きの負担を軽減したい場合は、エージェントサービスの活用も効果的です。たとえば、クロスネットワークでは、最短3営業日のアサインや契約手続きのサポートも対応しています。

目的に応じてハイブリッドに活用するのも効果的
SIerとフリーランスを選ぶのではなく、下表のようにプロジェクトのフェーズや規模に応じて役割分担するのも効果的です。
| 役割分担の例 | SIer | フリーランス・SES |
|---|---|---|
| フェーズで分ける | 上流工程 (要件定義~設計) | 下流工程 (構築~テスト、運用・保守) |
| 規模で分ける | 大規模部分 (インフラ構築・セキュリティ対応など) | 小規模部分 (アプリ開発・動作検証など) |
準委任契約が基本となるフリーランスやSESは、一時的にエンジニアを増員したい企業に適しています。フェーズや規模で役割分担することで、コストと負荷を分散した効率的なプロジェクト運用が可能です。
SIerの分類に迷ってしまうときはクロスネットワークにご相談を
今回解説したように、SIerは分類によって企業の成り立ちや得意な業務領域が異なります。効果的なインフラ構築や改善案の提案を得るためには、自社の業界や業務課題に適した分類選択が必要です。
ただし、小規模で柔軟な対応が求められるプロジェクトには、SIerの強みを生かしきれない可能性もあります。自社のニーズにSIerの強みがマッチしないときは、契約の柔軟性や費用対効果に優れた「フリーランスの活用」を検討するのも効果的です。
フリーランス専門のエージェントサービス「クロスネットワーク」では、業務経験が豊富なインフラエンジニアを迅速にマッチングいたします。プロジェクト単位でも柔軟に対応しており、初めての業務委託を検討する企業でも安心です。
クロスネットワークに相談いただければ、最短3営業日でのアサインも可能です。また、週2〜3日の依頼にも対応しているので、解決したい課題やご要望に応じて柔軟な外注をサポートいたします。
サービス資料は【こちら】から無料ダウンロードが可能です。柔軟な契約条件でインフラエンジニアを確保するなら、ぜひ気軽に【お問い合わせ】ください。平均1営業日以内にご提案します。
- クロスネットワークの特徴
- クロスネットワークに登録しているインフラエンジニア参考例
- 各サービスプラン概要
- 支援実績・お客様の声
元エンジニアのWebライター。自動車部品工場のインフラエンジニアとして、サーバー・ネットワークの企画設計から運用・保守まで経験。自分が構築したインフラで数千人規模の工場が稼働している達成感とプレッシャーは今でも忘れられない。
