
近年、5GやIoTの普及により通信系エンジニアの需要が増しています。自社のIT基盤を安定させるべく人材の確保を急いでいる企業も多いでしょう。
しかし、通信系エンジニアの市場動向やスキルセットを正確に理解していないため、人材確保が難航しているケースも多いです。競合他社との人材獲得競争も厳しくなっているので、効率的にエンジニアを採用したいもの。
そこで、本記事では通信系エンジニアの役割と関連する職種、必要なスキルなどについて解説します。自社の求める人材像や予算感にあわせてエンジニアを確保する方法も紹介するので、参考にしてください。
通信系エンジニアとは|ネットワークを支える専門職
通信系エンジニアとは、企業の通信ネットワークインフラを設計・構築・運用する専門技術者のことです。5GやIoTの普及により、従来のネットワークエンジニアの枠を超えた新しい役割が生まれています。
近年はクラウド技術の浸透により、より高度な通信技術が必要とされつつあります。それに伴い、あらゆる側面から第三者に攻撃されるリスクも高まっているため、セキュリティの知識も不可欠です。
通信系エンジニアの定義
通信系エンジニアは企業や社会の通信ネットワークインフラ全体を設計・構築・運用する技術専門職です。ネットワークエンジニアがネットワーク機器の設計・構築から運用を中心に担当するのに対し、通信系エンジニアは物理的なケーブル配線から高度なネットワーク設定まで、通信に関わるあらゆる幅広い領域を扱います。
とくにOSI参照モデルと呼ばれる通信の7階層モデル全体を理解し、どの層で問題が発生しても対応できる幅広い知識と技術力をもっている点が重要です。
通信系エンジニアの役割
通信系エンジニアの役割は単なる「ネットワークの管理者」という枠を超えて、企業のDX推進の中核を担う存在へと進化しています。従来の主要な役割である社内ネットワークの安定稼働はもちろん、クラウド移行の設計、セキュリティ対策の強化、リモートワーク環境の構築など、企業の競争力に直結する重要なミッションを担います。
とくに5GやIoTデバイスの急増により、数千・数万の機器を同時に接続する大規模ネットワークの設計や分散ネットワーク環境の構築も求められるようになりました。サイバー攻撃が高度化するなかで、通信系エンジニアはセキュリティ分野においても中心的な役割を果たし、企業の重要データを守る最前線で活躍しています。
通信系エンジニアに関連する職種
通信系エンジニアは、専門性の広さから多様な職種と密接に関わっています。通信系に深く関連する職種は主に以下の4つです。
- ネットワークエンジニア
- 移動体通信エンジニア
- インフラエンジニア
- セキュリティエンジニア
ネットワークエンジニアと移動体通信エンジニアは通信系エンジニアに含まれる職種、インフラエンジニア・セキュリティエンジニアは関連した職種という認識をもつと理解が進むでしょう。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは企業の通信インフラの心臓部を支える職種です。主な業務は企業内のLANやWANの設計・構築・運用で、ルーターやスイッチといったネットワーク機器の設定や管理も行います。
Cisco Systems社やJuniper Networks社といった主要メーカーの機器を実際に操作できる実務スキルが重要で、CCNAなどの資格保有者は即戦力として高く評価されます。ネットワークトラブルは業務に直結するため、障害発生時には迅速に原因を特定し復旧させる能力も欠かせません。
関連記事:即戦力のネットワークエンジニアを採用するコツとは?採用率を高めるポイントも解説
移動体通信エンジニア
5Gの本格普及により、移動体通信エンジニアは通信キャリアや通信機器メーカーから求められる希少性の高い人材とされています。主な業務は5G基地局の設計・構築・最適化で、電波伝搬特性を理解したうえで、専門的な測定機器を使って電波の強度や品質を調査・解析する技術が必要です。
都市部では、ビルの反射や遮蔽により電波環境が複雑になるため、シミュレーションツールを活用しながら、最適な基地局配置やアンテナ角度を決定する高度な専門性が求められます。5Gでは従来の4Gと比べて使用する周波数帯が高く電波の届く範囲が狭くなるため、より多くの基地局を効率的に配置する設計力も重要です。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、サーバー、ストレージ、ネットワークといった基盤全体を統合的に管理する職種です。通信系エンジニアと密接に関わる領域を含みつつ、より幅広いITインフラを担当します。従来の物理サーバーだけでなく、AWSやMicrosoft Azureなどのクラウド環境も扱えるハイブリッドスキルも必須です。
また、VMwareやHyper-Vといった仮想化技術、DockerやKubernetesといったコンテナ技術(※)の知識も求められます。とくに「Infrastructure as Code」という考え方で、TerraformやAnsibleといったツールを使ってインフラ構築を自動化できるエンジニアは、採用市場で高い需要があります。
(※)コンテナ技術:アプリケーションとその実行環境を独立したパッケージとして仮想化する技術
関連記事:インフラエンジニアの需要が高い理由と優秀な人材の獲得方法を解説
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、サイバー攻撃から企業を守る専門職です。年々巧妙化するサイバー攻撃に対抗するため、ファイアウォール、IDS/IPS(※)、VPNなどの専門的なセキュリティ機器の設計・運用を担当します。
実際にセキュリティインシデントが発生したときの初動対応が重要で、攻撃の痕跡を分析するフォレンジック調査スキルをもつエンジニアは希少価値が高いです。国家資格である情報処理安全確保支援士の保有者は、その専門性が認められているため採用時に高く評価されます。
(※)IDS/IPS:IDSは不正アクセスを検知して通知するシステム、IPSは不正アクセスを検知したうえで自動的に遮断・防御も行うシステム
関連記事:インフラエンジニアとセキュリティエンジニアの違いと課題別役割分担を解説
通信系エンジニアに求められるスキル・知識
通信系エンジニアの採用を成功させるためには、専門スキルとヒューマンスキルの両方を正確に評価することが不可欠です。ここでは、通信系エンジニアに求められる主要なスキルについて解説します。
- ネットワーク設計・運用スキル
- 主要ベンダー機器の知識
- クラウド・仮想化技術の知識
- セキュリティ対策スキル
- 課題解決力・コミュニケーション力
ネットワーク設計・運用スキル
ネットワーク設計・運用スキルは通信系エンジニアの基礎能力です。
具体的には、TCP/IPプロトコルスタックの理解が重要です。これはインターネット通信の仕組みを階層別に整理したもので、各層がどのような役割をもち、どのように連携して通信を実現しているか理解している必要があります。
IPアドレスの割り当てやサブネット計算、VLANの設計能力も必須です。たとえば「192.168.1.0/24のネットワークを4つのサブネットに分割する」といった実務的な課題を即座に解決できる能力が求められます。さらに、OSPF・BGP・EIGRPといったルーティングプロトコル(※)の設定と最適化ができることも重要です。
トラブルシューティングでは、通信障害が発生した際に物理層から順番に原因を切り分けていく体系的な知識と、パケットキャプチャツールを用いた詳細な分析能力が採用時の重要な評価ポイントになります。
(※)ルーティングプロトコル:ルーター同士が経路情報を交換し、最適な通信経路を自動的に選択するための仕組み
関連記事:ネットワークエンジニアに必要なスキルとは?勉強方法やおすすめの資格も紹介
主要ベンダー機器の知識
通信系エンジニアの実務能力を判断するうえでの目安の一つが、主要ベンダーの機器をどれほど扱えるかです。
Cisco Systems社のIOSやJuniper Networks社のJunos OSといった、業界標準のネットワーク機器OSをコマンドライン(CLI)で操作できることは必須とされています。GUIツールでは設定できない詳細なパラメータ調整や、複数機器への一括設定、トラブル時の迅速な対応にはCLIが不可欠だからです。
Cisco Systems社・Juniper Networks社・Fortinet社・Palo Alto Networks社など複数ベンダーの機器特性を理解し、用途や予算に応じて最適な機器を選定できる能力も重要な評価ポイントです。運用・保守では、ファームウェアアップデートやセキュリティパッチの適用経験があるかどうかも確認しましょう。これらの作業は計画的かつ慎重に行う必要があるため、実務経験の有無が採用後のパフォーマンスに直結します。
クラウド・仮想化技術の知識
現在の通信系エンジニアにとってクラウド・仮想化技術の知識は、もはや必須スキルとされています。
AWSのVPCやMicrosoft AzureのVirtual Networkといったクラウド上の仮想ネットワークは、従来の物理ネットワークをクラウド上で再現する仕組みであり、その設計スキルは通信系エンジニアにとって基本です。
とくに重要なのがハイブリッド構成の構築経験です。オンプレミスとクラウドを安全に接続し、シームレスにデータをやり取りできる環境を構築できるエンジニアは市場価値が高く評価されます。
さらに、ロードバランサー(負荷分散装置)やCDN(コンテンツを世界中のユーザーに効率的に配信する仕組み)といったクラウドネイティブなサービスを活用し、スケーラブルで高可用性のあるシステムを構築できる能力も評価すべきポイントです。コスト面では、クラウドの従量課金制を理解し、必要なパフォーマンスを確保しながらも無駄な費用を削減できる設計力があるかどうかも確認しましょう。
関連記事:ITインフラのクラウド化とは?導入のメリット・移行手順などを解説
セキュリティ対策スキル
サイバー攻撃が日々巧妙化するなかで、セキュリティ対策スキルも通信系エンジニアに必要です。
基本となるのはファイアウォールポリシーの設計と実装能力で、どの通信を許可し、どの通信を遮断するかを適切に判断し、セキュリティと利便性のバランスを考慮する必要があります。暗号化技術についてはSSL/TLSやIPsec VPNの仕組みを理解し、実際に設定できることが求められます。
セキュリティインシデントが発生したときの対応力も重要です。ログ分析から攻撃手法の特定、影響範囲の調査、再発防止策の立案まで一連の流れを理解していなければいけません。最新のセキュリティトレンドとして、ゼロトラストネットワーク(※1)やSASE(※2)といった概念を理解しているエンジニアは、将来性の観点から高く評価されます。
(※1)ゼロトラストネットワーク:組織内外のすべての通信を信用せず常に検証するという原則に基づいたセキュリティモデル
(※2)SASE(Secure Access Service Edge):ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドサービスとして統合したアーキテクチャ
関連記事:ITインフラにおけるセキュリティとは?重要性と企業の被害事例・対策も解説
課題解決力・コミュニケーション力
技術力が高くても、課題解決力とコミュニケーション力がなければ、通信系エンジニアとして活躍することは難しいでしょう。
まず重要なのが、ネットワーク障害やシステム停止といった複雑な技術的内容を経営層や営業部門などの非エンジニアにもわかりやすく説明できる能力です。たとえば「OSI参照モデルの第3層で問題が発生」ではなく「通信経路に問題があり、データを正常に送受信できない状態」と言い換えるなど、本質を伝える力が必要です。
顧客やベンダーとの折衝では、技術的な要求と予算・納期のバランスを調整し、全員が納得できる落としどころを見つける交渉力が求められます。
さらにネットワーク障害やサーバーダウンなどのトラブル発生時には冷静に状況を分析する必要あります。影響を受けている回線の特定から復旧作業、原因究明、再発防止策の立案まで、論理的に問題を解決していくスキルが欠かせません。
通信系エンジニア採用における課題
通信系エンジニアの採用市場は売り手市場が続いており、多くの企業が人材確保に苦戦しているのが現実です。とくに中小企業にとっては、限られた予算と知名度のなかで優秀な人材を獲得しなければいけません。
通信系エンジニア採用の主な課題は以下のとおりです。
- 専門性が高いゆえに評価が難しい
- 他社との競争により採用コストが上昇する
- 慢性的な人材不足が続いている
専門性が高いゆえに評価が難しい
通信系エンジニアの採用が失敗する主な原因の一つに、採用側が技術を正しく評価できないことが挙げられます。
採用担当者は人事のプロではあっても技術の専門家とは限りません。応募者が本当に必要なスキルをもっているのか、実務で活躍できるレベルなのかを見極められないケースもあります。
CCNAやネットワークスペシャリストといった資格の有無だけで判断してしまい、実際の設計力やトラブルシューティング能力といった実務スキルを見落としてしまうことも珍しくありません。技術評価の基準が標準化されていないため、面接官によって評価が異なり、本当に優秀な人材を見逃してしまうリスクも高くなっています。
他社との競争により採用コストが上昇する
通信系エンジニアの採用コストは高く、予算面でもおおきな負担となっています。hosi
SD-WAN(※)、5G、ゼロトラストネットワークといった最新の通信技術領域に精通した人材は希少であり、優秀なエンジニアには複数社から内定が出ることもあります。最終的には年収や福利厚生といった条件面での競争になるでしょう。しかし、単純に年収を上げれば良いわけではなく、最新技術に触れられる通信インフラ案件の有無やキャリアパスの明確さなど、総合的な魅力で他社と差別化する必要があります。
採用エージェントを利用する場合、成功報酬として年収の30〜35%という高額な手数料がかかります。せっかく高いコストをかけて採用しても、入社後のミスマッチで早期離職してしまう人材も少なくありません。
(※)SD-WAN:ソフトウェアでWANを制御・管理し、通信を効率化する技術
慢性的な人材不足が続いている
通信系エンジニアの人材不足は構造的な問題であり、今後もさらに進むことが予想されます。
DX推進により、これまでIT投資に消極的だった企業も通信インフラの強化に乗り出し、採用ニーズが増加しています。とくに5G、IoT、クラウド化といった新技術の普及で従来とは異なるスキルセットをもつエンジニアが必要とされており、既存の人材では対応できないことも少なくありません。
現役のエンジニアも日々進化する技術についていくために継続的な学習が必要で、新技術に精通した人材は限定的です。
大学や専門学校によってはカリキュラムの更新が追いついていないこともあります。その結果、求められるスキルと教育内容のギャップが広がり、新卒採用でも即戦力確保が困難な状況が続いています。
関連記事:ネットワークエンジニアの人材不足が与える影響と解消手段を解説
通信系エンジニアの採用課題を解決するフリーランス活用
ここまで通信系エンジニアの採用課題について解説してきましたが、通常の正規雇用では人材の確保が難しく、採用コストもかさむ恐れがあります。
そこで有効なのがフリーランスの活用です。フリーランスとは組織に所属せず、取引先の企業と業務委託契約を結んで案件を受注する人材のこと。高い専門性と柔軟な契約条件から重宝する企業が増えています。
ここではフリーランスを活用するメリットを解説します。
専門スキルをもつ人材を即戦力として活用できる
フリーランスエンジニアは自身のスキルを生かして仕事を獲得しているため、専門性が明確で即戦力性が高いという特徴があります。
契約時に過去の実績やポートフォリオを提示する必要があるため、どのような技術を使ってプロジェクトを成功させたかが具体的に整理されています。たとえば、AWS環境でのネットワーク構築に特化したエンジニア、5G基地局の設計経験が豊富なエンジニアなど、自社が必要とする技術領域にマッチする人材を選べるでしょう。
同じ業界や類似プロジェクトの経験があるフリーランスであれば、業務知識や技術的な前提を共有しているため、オンボーディング期間を大幅に短縮できます。正社員採用では見極めが難しい実務能力も、フリーランスの場合は過去のクライアントからの評価や実績で判断できるため、ミスマッチのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
必要な期間・プロジェクト単位で柔軟に契約できる
フリーランスには、人件費を固定費化せずに必要なときに必要なだけリソースを確保できる柔軟性もあります。
たとえば、3か月の短期プロジェクトや、週2日だけのスポット業務など、ニーズに応じた契約が可能です。ネットワーク更新プロジェクトが6か月間だけある場合、その期間限定でスペシャリストを活用し、プロジェクト終了後は追加コストを発生させずに済みます。
契約内容も柔軟に調整でき、最初は週3日からスタートして、パフォーマンスが良ければフルタイムに移行、さらに正社員化を打診するといった段階的なアプローチも可能です。
業界全体の人材不足を補う新たな採用チャネルとなる
フリーランス市場には、正社員の採用市場では出会えない優秀な通信系エンジニアが多数存在しており、採用の可能性を広げることができます。
5G基地局設計、光ファイバーネットワーク構築、無線通信プロトコル開発などの実務経験を積んだエンジニアが、独立してフリーランスになるケースも見られます。また副業解禁の流れから、現役の通信システム設計者やネットワークアーキテクトが、週末や夜間のみフリーランスとして活動することも珍しくありません。
また、急な欠員や繁忙期の人員不足といった緊急事態にも、フリーランスなら数日から1週間程度で稼働開始できるため、ビジネスへの影響を最小限に抑えられるでしょう。
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- クロスネットワークの特徴
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新卒で大手インフラ企業に入社。約12年間、工場の設備保守や運用計画の策定に従事。 ライター業ではインフラ構築やセキュリティ、Webシステムなどのジャンルを作成。「圧倒的な初心者目線」を信条に執筆しています。